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まるで普通の親子のようにクッキーを作った一週間後。イルミとAはある豪邸に忍び込んでいた。
何のためとは聞くまでもない。ゾルディック家に生まれたのだから、暗殺に決まっている。


「イルくん、準備はいい?行くよ?」

「姉さんこそ」


ゾルディック家では四歳の誕生日に暗殺デビューを果たす。なのでAが一足早く人を殺し、イルミは少し遅れて初の暗殺をこなした。

今回二人は初めて一緒に仕事に出た。シルバの計らいだ。というのも、イルミがずっと腑に落ちない顔つきをしていたからである。
与えられる仕事は簡単な部類とはいえ、修行とは全く異なる空気感、緊張感のある仕事をするのは決して楽なことではない。
だというのに、Aは平然とした顔をしている。これがイルミにはどうにも不可思議でならなかったのだ。

修行がつらければ泣き、キキョウに甘やかされて笑い、ゼノにからかわれてぷんすか怒り、執事達と遊んではしゃぐ。イルミに無償の愛情を注いでは、上手くいかずに一喜一憂。
とても暗殺一家の長女とは思えない普通の子ども然とした彼女が、人の死に触れて何も変わらないのが、イルミにとっては謎でしかない。

イルミは生まれながらに暗殺者に相応しい性格をしていた。感情を抑制するのが巧みで、時には家族すら欺いてしまう。
それはつまり標的に対して限りなく冷淡になれるということで、情に流されるのが命取りになるこの世界においては大きなアドバンテージであった。

そのイルミでさえ、初めて暗殺した時は一抹のためらいを禁じ得なかったというのに。
この姉が耐えられるとは到底思えず、ずっと疑問を抱いていたイルミを見かねて、シルバは二人を同じ仕事に投入したのだった。


「三階奥の主人室ね。監視カメラがないのは確認済みだから、そこの木から伝って入ろう。他に何かあったっけ?」

「大丈夫。それでいいと思う」

「よし!二人でお仕事するの初めてだから、お姉ちゃん頑張っちゃう!」


屋敷の庭先で声をひそめて作戦を練り終える瞬間まで、Aはイルミがよく知るAであった。それが途端、一変する。

ふっ、とろうそくの火が消えるように、まず表情が消えた。些細な事柄でころころと変化していた純真さはなりをひそめ、そこに冷酷な仮面が張り付いた。
違う(・・)。今目の前にいる少女は、イルミが知るAではない。あるいは誰よりも冷徹な、れっきとした暗殺者だ。



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くらげ(プロフ) - リメさん» 初めまして、閲覧ありがとうございます。小説を書くのは初めてなので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2018年9月19日 21時) (レス) id: 0096635b43 (このIDを非表示/違反報告)
リメ(プロフ) - 初めまして!とっっても面白いです!!くらげさんの文の書き方がどストライクすぎてすいすい読んでしまいました( *˙˙*) 更新頑張って下さい! (2018年9月19日 21時) (レス) id: d23165a5ce (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くらげ | 作成日時:2018年9月2日 4時

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