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のんびりとした会話を交わしながら、広大な屋敷の中を歩く。屋敷とはいっても、通常想像されるものとゾルディック家の邸宅は趣が違う。
パドキア共和国デントラ地区、ククルーマウンテン。標高三千七百二十二メートルを誇るそこの山頂にゾルディック家が暮らしていると伝えられているが、真実はそう単純ではない。
山の
正しい意味での山中にも小屋などはあるが、過ごす時間は山の中の方が遥かに多い。陽の光が差さない暗所に閉じ込められた場合を想定した訓練でもあるという。
そんな構造であるから改造や増築もある程度は容易く、この家で生まれ育った二人ですら迷子になることもある。加えて、道には至る所に罠が仕掛けられている。
日常的に危険を孕んだ、まさに暗殺一家に相応しい棲み家だ。
「よかった、今日は道変わってなかったね」
無事にキキョウの部屋にたどり着き、Aがほっと息をつく。ドジを踏んで何度か罠に引っかかったことは知らんぷりのようだ。
指摘すると例によって膨れるので、イルミは無言で頷いた。姉は基本的には弟のことを慮ってくれるいい姉だが、面倒な時はとことん面倒なのである。
「お母さん、おはようございます!」
「あらあら、Aちゃん!イルミも……お休みだから遊びに来たのかしら?」
「うん!何か楽しいことないかなって」
ノックもせずに部屋に入ったことを咎めもしない。愛する我が子が訪れてくれたのがよほど嬉しいらしく、キキョウの声のトーンはあからさまに高くなった。
「楽しいこと?あ、そうそう。また新しいお洋服が届いたのだけれど……」
「それはいやー!ね、イルくん!」
「……まあ、できたら」
「あら、そう?じゃあ何をしようかしら」
いーっと歯を出して嫌がるAはイルミにも同意を求め、さり気なく責任を分散させた。
天然なのか計算なのか、間違いなく天然ではあろうが、自分だけ捕まるのを回避するのが中々上手い。
お得意のファッションショーを封じられたキキョウは首をひねって考え、細い指先を立てて「お菓子を作りましょう!」と提案した。
毒が入っていようがいまいが、甘いものが好きなAの瞳がぱっと輝く。
「お菓子!?作る作るー!ね、ね、何作るの?なあに?」
「そうねぇ……簡単に、クッキーにするわ。ヒ素入りのね」
「はーい」
毒入りだ。イルミはどうやって実食を回避しようか考えていた。
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くらげ(プロフ) - リメさん» 初めまして、閲覧ありがとうございます。小説を書くのは初めてなので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2018年9月19日 21時) (レス) id: 0096635b43 (このIDを非表示/違反報告)
リメ(プロフ) - 初めまして!とっっても面白いです!!くらげさんの文の書き方がどストライクすぎてすいすい読んでしまいました( *˙˙*) 更新頑張って下さい! (2018年9月19日 21時) (レス) id: d23165a5ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くらげ | 作成日時:2018年9月2日 4時