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念を鍛え、暗殺者としての力量を鍛え、週に一度はきちんと休み、月に一度は仕事に出る。
規則正しく丹念に修練を重ね、十一歳の誕生日を迎えた時、Aは“流”をも体得していた。
達人と比較すれば、勿論まだまだ稚拙だが、歳を思えば尋常ならざる成果であった。
「お父さん、あのね。わたし、能力考えたの。聞いてくれる?」
恒例の豪華な誕生パーティを終えた、その後。
華やかな行事が過ぎてしまった時に特有の、どこかもの寂しい静けさがしんしんと降り積もる夜に、シルバの部屋をAがおずおずと訪ねた。
応用技を全て修めても決まらなかった能力が、誕生日という記念すべき日についに彼女の頭の中で形になったのだ。父として祝福すれど、どうして拒否することがあろうか。
すぐに部屋に招き入れ、ブランケットをかけてやり、執事に命じて温かいココアも用意させた。
例の大きなソファに並んで座り、シルバはAから話し出すのを待った。
彼女は、出した結論に至るまでのプロセスを説明するのが苦手だ。だから他人に話す時は、下手に質問せず、本人が話すままに任せた方がよほど上手くいく。
「色々ね、悩んでたの。わたしは何がしたいのかなって。でね、やっぱりね、みんなを……家族を守りたいって、思ったんだ。
でも、守るってどうしたらいいのか、行き詰まっちゃった。辞書も引いてみたんだけど、『大切なものが失われたり、壊されたりしないよう防ぐ』とか『目を離さない』とか、あんまりしっくりこなくって」
ココアが一口分減った。焦らずともよいと言うように、丸まった華奢な背中をゆっくりと撫でてやる。
「それで、ちょっと考え方を変えてみたの。わたしが守りたいって思うのは、みんなに悲しんでほしくないから。なら、悲しく思うことを取り除ける能力はどうかなって。
それで、お母さんとかイルくんに聞いてみたら、二人とも『家族がいなくなるのは悲しい』って言っててね、じゃあわたしは、いなくならないように……死なないようにするのがいいんじゃないかって思ったの。
お父さんはどう?もし、誰かがいなくなったら、悲しい?」
「ああ、悲しいとも。大切な家族なんだから」
「よかったあ、違わなくて」
ほっとココアの香りの息を吐き出した。
シルバの「悲しい」が異なるところにあったのなら、能力も一から考え直しであるから、無事に思惑を伝えられることに安堵したのだろう。
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くらげ(プロフ) - リメさん» 初めまして、閲覧ありがとうございます。小説を書くのは初めてなので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2018年9月19日 21時) (レス) id: 0096635b43 (このIDを非表示/違反報告)
リメ(プロフ) - 初めまして!とっっても面白いです!!くらげさんの文の書き方がどストライクすぎてすいすい読んでしまいました( *˙˙*) 更新頑張って下さい! (2018年9月19日 21時) (レス) id: d23165a5ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くらげ | 作成日時:2018年9月2日 4時