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念とは何か。念を用いてどんなことができるのか。
基本的な四大行やその応用技を座学で教わり、Aは早く念を覚えたくて仕方がないと言いたげにうずいていた。

その気持ちに応えてやるように、早速念の修行が始まった。
外的刺激の一切ない部屋で、ただひたすらに瞑想をするのである。自身を取り巻くオーラを実感するためだ。

これは彼女には苦痛かと思っていたが、シルバの予想に反してAは身じろぎ一つすることなく、飲まず食わずで睡眠さえ取らずに丸一日くらいは瞑想を続けることができた。
拷問の訓練の一環として似たような環境に放り込んだことはあったが、これほどまでの集中力を発揮するとは想定外だった。

新たな事柄を吸収するにあたり努力を惜しまない。
そして一つの物事にのみ向き合った時、Aの成長率は常人を遥かに凌駕する。
それがどれだけ偉大な才能か、シルバはここに至ってようやく理解した。

当初の予定では、オーラを自覚するまで三ヶ月か、あるいはそれ以上を目安としていた。
しかし、瞑想を始めて僅か二週間で、Aは一寸先も見えない闇に閉ざされた部屋で目を開けた。
全身を包む生ぬるい「何か」を感じ取ったのだ。


「お父さん。オーラ、何となく分かったよ」


そこからの進歩は目覚しかった。
“纒”を覚えるまでにおよそ一ヶ月。
“絶”は尾行ごっこで基礎を養われていたこともあり、三日と待たずして会得した。

“練”は多少の苦労が要った。
遺伝か、あるいは天性のものか、Aは潜在オーラが非常に多く、それだけをいえばシルバと遜色ない量を有していたからだ。
それゆえに、持て余すほど多すぎるオーラを御しきれず、結局、習得までに二ヶ月近くを消費した。

念の修行が大半を占めるようにはなっても、以前まで行っていた訓練も多少は並行してやるものだから、Aの疲労はイルミの比ではなかった。
まだ十歳になったばかりの少女が、この厳しい鍛錬に耐えられたのは、ひとえに執念ともいうべき衝動があったからに他ならない。

家族を守る力を。何ものにも負けない強さを。ゾルディック家長女に相応しい能力を。

百戦錬磨のシルバでさえ目を向く一念は、文字通り念能力に多大な影響を及ぼし、Aの進化は著しく遂げられていった。


「A。そろそろ次の段階に移るぞ」


“練”をようやくものにできてはしゃぐAの前に、水がなみなみと入ったグラスと一枚の葉が用意された。

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くらげ(プロフ) - リメさん» 初めまして、閲覧ありがとうございます。小説を書くのは初めてなので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2018年9月19日 21時) (レス) id: 0096635b43 (このIDを非表示/違反報告)
リメ(プロフ) - 初めまして!とっっても面白いです!!くらげさんの文の書き方がどストライクすぎてすいすい読んでしまいました( *˙˙*) 更新頑張って下さい! (2018年9月19日 21時) (レス) id: d23165a5ce (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くらげ | 作成日時:2018年9月2日 4時

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