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家の間取りは随分と変貌していたが、Aはあちこちを駆け回ってもう一度道を覚えるなりキキョウの部屋に突入した。
勿論、新たな家族に会うためだ。

無理に引っ張って来たイルミは、ここまで全速力で走り通してきたからいくらか疲れていたが、弟を見て疲れなど忘れてしまった。
初めてできた弟は、ほんの少し力を込めたら死んでしまいそうなほど小さく、柔らかだった。


「お母さん、ただいま!ミルくんは!?」

「お帰りなさい、二人とも。よく頑張ったわね。ほら、ミルキもお帰りなさい、って」

「だーう」


自分もかつてはそうだったことを忘れ、あまりにか弱い生き物に怖気付くイルミを置いて、Aはわくわく顔でミルキに駆け寄った。
キキョウの腕に抱かれたミルキは、むっちりとした腕をよたよたと動かしている。突然現れた騒がしい存在にも動じないあたり、彼も立派なゾルディック家の子だ。


「Aちゃん、ミルキを抱っこしてみる?」

「え、いいの?」

「勿論よ。ほら、首を支えて、お尻をちゃんと持ってあげて……そう、上手ね。ミルキもお姉ちゃんに抱っこされて嬉しいわねぇ」


お姉ちゃんらしいことがしたくてうずうずしていたAに気がついたのか、キキョウは腕の中の赤子を差し出した。
恐る恐る、小さな、けれど温かい命を受け取ったAは、ミルキに頬を触られて心底幸せそうな微笑みを浮かべた。

慈愛に満ちた微笑だ。女ならば誰しもが持ち得る母性が、生まれたばかりの幼子に触れたことで目覚めたのだろう。
当然ながらその顔はイルミが見たことのないものだ。

ほとんど無意識に、姉の腕からミルキを奪い取っていた。


「……イルくん?あんまり乱暴にしたら、ミルくんが泣いちゃうよ?」


激しく動かされたにも関わらず、ミルキはむしろ楽しそうにきゃっきゃとはしゃいでいた。
もしもミルキが泣いていたら、Aは怒っていただろう。
そう思うとなぜか胸がむかむかして、イルミは無言でミルキをキキョウに押し付け、部屋を飛び出してしまった。

イルミは、確かに、親からの愛情が変わらぬことを疑っていなかった。
だが飛行船内ではAの真実が上手く収束した喜びもあって、失念していたのだ。

家族愛にあふれたAが、自分以外の兄弟に笑いかけ、愛を注ぐことなど、ちょっと考えれば分かることだというのに。
いざ目の前にして、イルミの胸中にある感情が生じた。嫉妬と呼ばれるそれに弄ばれた結果が、先の行動であった。

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くらげ(プロフ) - リメさん» 初めまして、閲覧ありがとうございます。小説を書くのは初めてなので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2018年9月19日 21時) (レス) id: 0096635b43 (このIDを非表示/違反報告)
リメ(プロフ) - 初めまして!とっっても面白いです!!くらげさんの文の書き方がどストライクすぎてすいすい読んでしまいました( *˙˙*) 更新頑張って下さい! (2018年9月19日 21時) (レス) id: d23165a5ce (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くらげ | 作成日時:2018年9月2日 4時

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