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二人の毎日は修行漬けだが、週に一度は必ず丸一日休みの日がある。
いくら言葉もままならない頃から体を鍛えているとはいえ、オーバーワークは骨肉を壊してしまう。休息も修行のうちと何度も言い聞かせられた。
「イルくん、おはよー!起きて!」
「おはよう、姉さん」
この休日に限っては、イルミはAより遅く起きる──ふりをしている。週に一度くらいはお姉ちゃんぶらせてやろうという魂胆だ。
幼少期から達観しているイルミとは違い、Aはゾルディック家で育っているのが不思議なほど年相応の頭をしているので、それに気づく様子はまだない。
「お着替えこれね。今日は何して遊ぼっか」
「ありがと。クライミングでもする?」
「いや。お休みの日は体をあんまり動かしちゃだめなの」
今よりもずっと小さな時、強くなりたい一心でAは休日もこっそり自主トレに打ち込み、結果体を壊した。だからシルバは「必ず休みなさい」と口をすっぱくして言うのだ。
そのお説教がよほどつらかったのだろう。それ以来Aは休日をのんびりとした遊びに費やしている。
「お母さんのとこ行こうよ。何か教えてくれるかも」
「また着せ替え人形にされるよ?」
「そしたら逃げる!」
キキョウはシルバの厳しさを補うように優しさを二人にくれるので、自然休日はキキョウとともに過ごすことが多い。
ただし、キキョウが望む遊び方は変わっている。親のひいき目を抜きにしても整った顔立ちの二人に、隙あらば色んな服を着せたがるのだ。
ドレスやスーツ、民族衣装。よくも悪くも多文化的な流星街で育ったキキョウは、他国の文化に妙に詳しかった。
「お母さん、かわいいお洋服着せてくれるけど、ちょっと多いよね」
「オレにも女の子用の服渡してくるし」
イルミは母親似なので顔立ちが中性的だ。
まだ体が未成熟だからなおのこと性別の見分けがつきにくく、何も知らない新人執事にクイズを出して遊んだ時は、実に六割の執事がイルミの性別を間違えた。
「でもさでもさ、暗殺する時にさ、男の子にも女の子にもなれたら便利そうだよね!」
「性別そのものは変えられなくても、体格を変える術くらいはあると思うよ。ほら、手の形を変える方法教わったろ」
「あれ、痛いから苦手。あんなの全身でやったら死んじゃう」
ゾルディック家に伝統的に伝わる肉体操作は、人体を容易く凶器に変える。シルバが最も得意とする暗殺の一つだ。
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くらげ(プロフ) - リメさん» 初めまして、閲覧ありがとうございます。小説を書くのは初めてなので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2018年9月19日 21時) (レス) id: 0096635b43 (このIDを非表示/違反報告)
リメ(プロフ) - 初めまして!とっっても面白いです!!くらげさんの文の書き方がどストライクすぎてすいすい読んでしまいました( *˙˙*) 更新頑張って下さい! (2018年9月19日 21時) (レス) id: d23165a5ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くらげ | 作成日時:2018年9月2日 4時