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シルバは広くゆったりとした、ソファのような椅子を好んで用いる。
この飛行船にも、本邸にあるものとさして質の違わない大きなソファがあって、Aとイルミは父を挟むようにして座った。


「A。イルミ。お前達に話すことがある」


しきりに闘技場での経験を話したがっていたAも、シルバの神妙な声と顔つきに口をつぐんだ。
彼女は家族の心境を読むのが上手く、イルミはその力を借りて、何度か機嫌の悪いキキョウを回避している。


「謝ることでもある。お前達に秘密にしていた」

「秘密……?」


銀髪によく似合う、ヴァイオレットの瞳が、右手に寄り添っていたAをひたと見つめた。
他ならぬ自分に関することだとそこでやっと気づいたのだろう、不安を露わにして目線を彷徨わせ、助けを求めるように弟を見る。
既に話題の行き先を察しているために、イルミは一瞬交わった視線をそらしてしまった。


「A。お前は、オレ達と血が繋がっていないんだ」


シルバの重々しい告白が部屋に静かに浸透した。
姉の顔を見ることができない。
真実を知って欲しい気持ちと、このまま気づかずに何も問題のない家族として過ごしたい気持ちが、イルミの心の中で何度も反発して飛び回る。

著しい二律背反を抱えて表情を歪めたイルミが聞いたのは、およそ想像もできなかったセリフであった。


「それが、どうかしたの?」


驚愕に思わず、弾かれたように顔を上げた。
シルバの横顔も同様、まさかそう言うとは思わなかったようで、珍しく純朴な驚倒を露呈させていた。
Aは、二人がなぜ驚いているのか、それすらも理解していないようないつも通りの顔で二の句を継いだ。


「お父さんもお母さんも、血は繋がってないけど家族でしょ?わたしもそうじゃいけないの?」

「……いや」

「だよね。それに、家族のみんなも執事さんも、わたしをA=ゾルディックとして接して、育ててくれたよ。血が繋がってないことが問題なら、最初からそんなことしないと思う」


僅か九歳の少女が、何と達観したことだろう。
イルミの不安は全て杞憂に終わり、シルバが抱えていた仄かな後ろ暗さは一切合切が雲散霧消した。
黙りこくる父と弟を前に、なおもAの反論は止まらない。


「お父さんもお母さんも、わたしを愛してくれてることくらい分かるよ。血が繋がってないのに、イルくんと同じように大事にしてくれた。……それじゃあ、だめなの?」

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くらげ(プロフ) - リメさん» 初めまして、閲覧ありがとうございます。小説を書くのは初めてなので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2018年9月19日 21時) (レス) id: 0096635b43 (このIDを非表示/違反報告)
リメ(プロフ) - 初めまして!とっっても面白いです!!くらげさんの文の書き方がどストライクすぎてすいすい読んでしまいました( *˙˙*) 更新頑張って下さい! (2018年9月19日 21時) (レス) id: d23165a5ce (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くらげ | 作成日時:2018年9月2日 4時

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