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ゾルディック姉弟が天空闘技場で武者修行を始めてから、実に三年の月日が流れた。
Aは九歳、イルミは八歳。かつて一階で受付けをした当時より身長も伸び、第二次性徴の兆しも見え出している。
体術の向上も甚だしく、子どもには似つかわしくないしっかりとした筋肉もついている。
そうした外見の変化よりも如実に、二人の精神面は成長していた。
ただし、決していい方向にだけではない。
それぞれベクトルは違えど、屈折した愛情を静かに、しかし激しく育み、今や共依存といっても差し支えない領域にまで達しているのである。
当人達がそれを普通だと認識しており、また間違いを正せる立場の人間もいなかったため、この狂愛はすっかり二人の魂に根付いてしまった。
百九十階を踏破した二人を迎えにきたシルバがそれを直感したのは、親の第六感という他ない。
数多の愛の形を観測してきたシルバでさえも、二人を繋ぐ異様な形態をした想いの片鱗を感じ取り、この修行はしない方がよかったのではないかと、いくばくか後悔してしまうほどであった。
「お父さん!」
二百階の受付へと続く通路に立った父の姿に、Aは喜色満面に駆け寄った。
最後に見た日よりもずっと大きくなった愛娘を抱きとめ、「頑張ったな」と褒めてやると、Aは腕の中で誇らしさと照れ臭さが入り混じった微笑みを浮かべた。
彼女ほど素直に甘えることができないイルミにも手を広げてやり、シルバは三年ぶりに我が子を抱きしめたのだった。
「あのね、あのねお父さん、わたしたくさん頑張ったよ!イルくんもね、負けちゃう時もあったけど、でも前よりずっと強くなったんだよ!」
「ああ、よく三年でここまで来たな。もっとかかると思っていたよ。偉いぞ、A、イルミ。さあ、帰ろう。話は飛行船でいくらでもできるだろう?」
片腕それぞれでA達を軽く抱きかかえ、三人は天空闘技場を去った。
飛行船に乗ってしまえば、あれだけ高くそびえていた塔もぐんぐん小さく細くなっていく。
それを名残惜しそうに窓から眺めていたAとイルミを、シルバは自室に招いた。
二人に話したいことがあるのと同様、シルバにも積もる話がある。
それは新しく増えた家族のことであったり、これからする修行のことであったり──Aの出自についてのことであったり、多くのことを語らねばなるまい。
イルミは、シルバの面持ちから、何を話さんとするか察しているようだった。
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くらげ(プロフ) - リメさん» 初めまして、閲覧ありがとうございます。小説を書くのは初めてなので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2018年9月19日 21時) (レス) id: 0096635b43 (このIDを非表示/違反報告)
リメ(プロフ) - 初めまして!とっっても面白いです!!くらげさんの文の書き方がどストライクすぎてすいすい読んでしまいました( *˙˙*) 更新頑張って下さい! (2018年9月19日 21時) (レス) id: d23165a5ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くらげ | 作成日時:2018年9月2日 4時