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そうして確固たる目標を得た彼女の、百階クラス初戦。
Aの見目の良さや仕草の愛らしさ、それらに似合わない淡々とした戦いぶりは闘技場で人気を博し、観客席は満員である。聞くところによるとギャンブルの額もかなり高騰しているらしい。
イルミは直前まで別の試合に出ていたので、ロビーのモニターからその様子を観戦していた。ちなみに、イルミは安定した勝利を収めている。
『さぁーーあやって参りましたァ!とうとう百階の闘士の仲間入りをしたA選手の登場です!
若干六歳にして破格の強さ!小さな体に油断してはいけません、速く鋭くポイントを掠め取るその手腕は未知数!
対戦相手はミルドレ選手!百階クラスで半年にわたりその地位を保っている強者です!
新進気鋭とベテランの勝負、果たしてどちらが勝つのでしょう!それでは皆様、ギャンブルスイッチオーーン!』
モニターに表示された倍率は、僅かにミルドレが優勢だ。にやにやと薄ら笑いを浮かべる男は絶対の自信を持っているようで、Aを威圧的に見下している。
審判から開始の合図が出された。Aが例の質問をするよりも早く、ミルドレが口を開いた。
「おっと、動くなよ。弟クンがどうなってもいいのかい?」
Aの動きがぴたりと止まった。
無表情にミルドレを凝視している。一挙手一投足を見逃さんとする油断のない瞳を嘲るように、男はなおも続けた。
「オレの仲間が弟クンを捕まえてる。この試合を観ながらな。お嬢ちゃんがオレを攻撃したら、可愛い可愛い弟クンがひどい目に遭うぜ?」
声をひそめているので中継に音までは拾われていないが、読唇術を会得しているイルミは彼が何を言っているのか分かっていた。
明らかなハッタリだ。素早く周囲に警戒網を張り巡らせたが、イルミに不審な挙動を向けている者はいない。
妄言と芝居だけでこの試合を勝ち抜くつもりなのだろう。そうして百階クラスの待遇を貪っていたに違いない。
──実のところ、男の言葉は丸っきり嘘という訳ではない。
実際にイルミを人質に取ろうとしたこともあったが、あまりに隙がなかったために成功が叶わなかったのだ。
それを知る術がないAは動くに動けない。
あとは男の独壇場──かと思いきや、カメラ越しの彼女の姿がブれ、残像すら残す速さでミルドレに肉薄した。
高く跳躍し、頭頂部を鷲掴みにして引き寄せ顔面に膝蹴りを食らわせる。こうも乱暴な手段に訴えたのはこれが初めてだ。
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くらげ(プロフ) - リメさん» 初めまして、閲覧ありがとうございます。小説を書くのは初めてなので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2018年9月19日 21時) (レス) id: 0096635b43 (このIDを非表示/違反報告)
リメ(プロフ) - 初めまして!とっっても面白いです!!くらげさんの文の書き方がどストライクすぎてすいすい読んでしまいました( *˙˙*) 更新頑張って下さい! (2018年9月19日 21時) (レス) id: d23165a5ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くらげ | 作成日時:2018年9月2日 4時