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「ふざけたこと言ってんじゃねえぞ、このガキ!」


このフロアでは時間が限られている。引き分けの場合はただ体力を消耗するだけに終わるので、とにかく多くのポイントを獲得せねばならない。
無駄話をしている暇があるのなら相手より一撃でも手数を増やした方がいい。Aの真摯な問いかけを無視し、男は勇んで殴りかかった。


「お話し、聞いてくれないんだ」


常人よりかはいくらか鋭い拳打は虚しく空を切った。いつの間にか真横に立っていたAが、残念そうにため息をつく。
その速さは変わらず凡人を置き去りにする。観客もこの回避に湧くが、イルミは若干の違和を覚えていた。

昨日よりも速く、巧みだ。ブーディと戦った時に見せた迅速さよりも数段格が上がったように見える。

まさか、ネテロとの──遥か格上の人間との戦いを経て成長したのだろうか。たった一度、一時間にも満たないあのお遊びの中で。

そう思えるだけの根拠はある。彼女はひとたび教われば稀に見る柔軟さで新たな知識を吸収できる類の人種で、吸収率だけでいえばイルミを上回る。
家で特訓していた頃は、様々な修行を並列して行っていたから、マルチタスクを不得意分野とするAはその能力を最大限に発揮できていなかった。

しかし、先の遊戯でネテロは回避に徹していた。
その動きを捉えることはできずとも見て学び、実戦に投入することは彼女の観察眼をもってしたら不可能ではない。

一分野に傾倒した際、Aはこうも劇的な進化を遂げる。実父ですら見抜けなかった才能を一番に見つけ、イルミはいささかの誇らしさを覚えた。
家に帰ったらシルバに進言することを決めた。ネテロの受け売りだ。
イルミにはイルミに、AにはAに合った鍛錬が必要だということを。個性が芽生え始めた今、画一的な修行だけでは真の強さは得られない。


「じゃあいいよ。あなたにはもう用事がないから」


的確な打撃の連続を避け続ける。どれだけ打っても手応えはなく、男の首筋に汗が一粒流れた。
疲労が蓄積した瞬間をAは見逃さない。最初よりも僅かにキレの足りない右ストレートを避けざま、顎を下から蹴り上げた。

例えば殴る蹴るで相手の体を破壊できるほどの力は、未成熟な肉体のAには当然ない。
故に手段はもっぱら搦め手となる。脳震盪を起こしたり、柔らかい部位や皮膚の薄い箇所などを重点的に狙ってダメージを蓄積させる戦い方である。

Aは特に前者を好んでいた。面倒がないからだ。

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くらげ(プロフ) - リメさん» 初めまして、閲覧ありがとうございます。小説を書くのは初めてなので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2018年9月19日 21時) (レス) id: 0096635b43 (このIDを非表示/違反報告)
リメ(プロフ) - 初めまして!とっっても面白いです!!くらげさんの文の書き方がどストライクすぎてすいすい読んでしまいました( *˙˙*) 更新頑張って下さい! (2018年9月19日 21時) (レス) id: d23165a5ce (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くらげ | 作成日時:2018年9月2日 4時

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