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「お父さん、おはよう!」

「来たか」


つらいとか嫌いだとか言いながらも、Aは何だかんだ修行を楽しみにしている。強くなって、イルミやこれから生まれる弟、妹を守るのが夢だという。

その志は確かなようで、とても子どもが耐えられるものではない凄惨な特訓にAはよく努力している。
時にはイルミすら眉をしかめるような執念を見せることもあった。この姉は、姉であることに異様なほどの執着を持っている。


「父さん、今日は何するの?」

「ああ、今日は──」


子ども達に修行を課すのは、現当主で男親のシルバの役目だ。矮小な少年少女に対する扱いに慣れていないとみえて、時折無茶をしてはキキョウに叱られる。
一番酷かったのは、実戦訓練でイルミの利き腕を折った時だ。キキョウにはこってり絞られたし、Aにはしばらくの間警戒されて話すことすらままならなかった。

不慣れなりに子どもへの愛情はあるのだが、生まれてこのかた暗殺一本で育ったシルバは、適切な表現の仕方をわきまえていないのだ。
だからせめてという気持ちを込めて、この子達が簡単に死んでしまわないよう、持てる技術を教えている。

元より当主の座を継ぐのは銀髪の男児と決まっているから、血の繋がりなどは些細な問題であった。
何事も経験が大切だ。パパ初心者なシルバは、イルミとAにパパの練習をさせてもらっているとも言えるだろう。



夜中、修行部屋から出てきた二人は、いつもの通りズタボロだった。鼻血は出ているし痣はあるし、全身至る所に擦り傷や切り傷がある。

この傷を手当てするのは医療専門の執事とキキョウの役割だ。苛烈な修行の後は愛情を注いでやるべき、とはキキョウの言である。
特にAへは「女の子なんだから!」と行きすぎなくらいの治療を施す。イルミを疎かにしている訳では決してないが、スキンケアやら何やらを念入りにするのはAだけだ。

美容のこととなるとこだわりが強くなるキキョウに付き合うとキリがないので、イルミもこの対応に文句はない。
ただ傷が治って血が止まり、元通りに動かせるようにさえなればいい。


「……またお母さんに変なお水つけられる」

「化粧水と乳液とクリームと……あと何だっけ?」

「分かんない!イルくんとおんなじくらいでいいのに」

「オンナノコって綺麗でいたいものじゃないの?」

「大事なのは中身だって。本で読んだ」

「ふうん」


イルミは、口には出さないが、Aの綺麗な肌はいいと思う。



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くらげ(プロフ) - リメさん» 初めまして、閲覧ありがとうございます。小説を書くのは初めてなので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2018年9月19日 21時) (レス) id: 0096635b43 (このIDを非表示/違反報告)
リメ(プロフ) - 初めまして!とっっても面白いです!!くらげさんの文の書き方がどストライクすぎてすいすい読んでしまいました( *˙˙*) 更新頑張って下さい! (2018年9月19日 21時) (レス) id: d23165a5ce (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くらげ | 作成日時:2018年9月2日 4時

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