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以下の階層とは一線を画した造りのリング上でゲームをすること二十分。
Aはボールを取ることは愚か、ネテロに触れることすら叶わずにいた。
「ほっほっほ、遅い遅い。可愛いものじゃのう」
「むうう……!」
家で行う修行は主に、人をいかにして迅速に殺害するかである。他に拷問の訓練や尋問の座学など。
戦闘訓練は専門の執事から体術の基礎を教わるだけで、天空闘技場に来るまで二人はろくに誰かと戦った経験がなかった。
シルバによると、様々な流派を見て盗み、誰に教わるでもなく会得した個々の得意なスタイルを確立してそれを更に伸ばすためにも闘技場に行く意味があるという。
これまでの戦いで見せた通り、彼女の強みはその速さにある。
小柄な体格を存分に活かした素早い駆動は歴戦の執事にも褒められるほどのものであり、まだ幼く膂力に劣る彼女自身それを最大の武器として暗殺をこなしてきた。
どれほど強力な攻撃であろうと当たらなければ意味がない。
避けて動きを観察し隙を見出し、そこを突くヒットアンドアウェイの戦法がAの得意とするところであった。
暗殺もそんなものだ。やり方によっては一撃当てるだけでもいい。彼女の戦い方は目指すものに最適で、現状最も有効なスタイルである。
しかしそれが通用しないとなると、Aはほとんどの手立てを失う。
飛び道具もない。頼りにしていたスピードは歯が立たず、からかうように頭を撫でられる始末。
「イルくんは手を出したらだめだよ!」と言われたのでリング脇にいたイルミから見てもネテロとの実力差は歴然としており、どうあがいてもAの勝ち筋はなかった。
「あう」
じきに三十分が過ぎるといった頃合いで、長時間フル稼働していたAの体力が尽きた。
石板に足を引っ掛けて派手に転び、そこから動かない。
「おや、もう終わりかね」
汗一つかいていないネテロの言葉に反応し、一度はがばりと起き上がったがすぐに座り込んでしまった。
着ていた衣服も汗に張り付いていて、肩で息をしている。上気した頬をいっぱいに膨らませ、目には今にもこぼれんばかりに涙を溜めていた。
「ま、年の功ってヤツじゃな。Aちゃんや、今いくつだね」
「……六歳……」
「その歳でそれだけ動けるなら大したものよ。あとは経験じゃ。そして弛まぬ努力と鍛錬!たくさん食べて寝て遊ぶのも忘れない。これに尽きるわい」
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くらげ(プロフ) - リメさん» 初めまして、閲覧ありがとうございます。小説を書くのは初めてなので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2018年9月19日 21時) (レス) id: 0096635b43 (このIDを非表示/違反報告)
リメ(プロフ) - 初めまして!とっっても面白いです!!くらげさんの文の書き方がどストライクすぎてすいすい読んでしまいました( *˙˙*) 更新頑張って下さい! (2018年9月19日 21時) (レス) id: d23165a5ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くらげ | 作成日時:2018年9月2日 4時