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男がスタッフに引き渡されるのを見送り、三人は老人が滞在している居室を訪れた。二百階よりも上にある、派手ではないが高級感のある部屋だ。
先の騒動の経緯は一通り話し、二人が拘束されることはまずないと老人が保証してくれた。
老人はネテロといって、ハンター協会の会長をしているらしい。
ハンターといえばこの世界では特権的な立場を持つ職である。いずれも曲者揃いで、並大抵の人間ではプロにはなれない。
その組織のトップと聞いて、イルミは微かに肩を強張らせた。微弱な変化であったのだが、ネテロは即座に「そう緊張せずともよい」と朗らかに笑った。
会長手ずから淹れたお茶を飲むAは、ハンターと聞いてもいまいち理解していない顔である。
てっきり知っていて助けを求めたものと思っていたイルミは拍子抜けした。
「姉さん、ハンターのこと知らないの?」
「分かんない。ネテロさんはえらい人なんですか?」
「そうじゃよ、ワシってば偉いお爺ちゃんなんじゃ。それに強いぞお」
「それは分かるよ!ネテロさんが強そうだったから行ったんだもん」
「ほっほ、いい目をしておる」
湯のみで茶をすする老人に強者たる雰囲気は見出せないが、確かに先ほどイルミでは視認すら叶わなかった速さで男を倒している。
まるで隙だらけにしか見えないが、何かAにしか分からない気配のようなものがあったのだろう。
「お主達はここの闘士かな?幼いのにやりおるわい」
「わたしももうやめたいけど、お父さんとの約束なの。二百階まで行かないと帰れないんだ」
まだ小さい体には高すぎる椅子の上で足をぷらぷら揺らしながら、Aが不満を顔いっぱいにたたえた。
「お主もそうかの?坊ちゃんや」
「うん。父さんに放り込まれた」
「中々厳しい家庭じゃの。ところで、名前はなんという」
「わたしがAで、こっちがイルくん……えっと、イルミだよ」
そういえば名乗りもせずに長話をしていた。
こちらは暗殺一家だ。下手に名を明かしていいものか迷うイルミを置いてAが勝手に紹介すると、「ほう」と意味ありげなため息を漏らした。
「そうか、お主達がゼノの孫か」
癖なのか、長いひげをさすりさすり、ネテロが二人を順に見つめた。
穏やかな瞳の奥に底知れない達観がある。遥かな高みから見下ろされているような錯覚すら感じた。
いくらか怯んだイルミに対し、Aは底抜けに明るかった。「おじいちゃんを知ってるの?」と無邪気に問いかける。
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くらげ(プロフ) - リメさん» 初めまして、閲覧ありがとうございます。小説を書くのは初めてなので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2018年9月19日 21時) (レス) id: 0096635b43 (このIDを非表示/違反報告)
リメ(プロフ) - 初めまして!とっっても面白いです!!くらげさんの文の書き方がどストライクすぎてすいすい読んでしまいました( *˙˙*) 更新頑張って下さい! (2018年9月19日 21時) (レス) id: d23165a5ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くらげ | 作成日時:2018年9月2日 4時