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「おはようございます!」
「おはよう、姉さん」
食堂ではイルミが既に席についており、キキョウが言った通り居並ぶ食事に手をつけずに待ってくれていた。
嬉しい反面、どうにもイルミの方がお兄ちゃんらしくて、Aは素直に喜べずふくれっ面で自身の席に座った。
「姉さん、拗ねてる?」
「拗ねてない。別に、先に食べててもよかったのに」
強がりである。以前イルミが食事も何もかも終えた後に起きた時は、一日中ほっぺたに空気を詰め込んでいてなだめるのに苦労した。
そういうところだよ、とは誰も言えない。機嫌を損ねたAは厄介極まりないので、イルミはそれ以降できるだけ生活リズムを合わせてやることにしている。
イルミ=ゾルディックは、キキョウによく似た長男だ。Aとは双子さながらに育てられている。
彼は生まれつき感情が希薄な子どもで、初めての子育で手加減が分からない大人たちに度々限界を超えさせられる。
Aは「イルくんにできるんだからわたしもできる!」と無理やり同じメニューをこなしているが、二人とも夜になれば目元を真っ赤に腫らして帰ってくる。
どうにか食らいついているのは、お互いが高め合い励まし合う関係にあるからだろうか。
少なくとも世話役の執事は「イルミ様とA様は仲がよろしいですよ」と言うだろう。
今もそうだ。体格に不釣り合いな椅子の上で足をぷらぷら揺らすAをイルミがいさめ、それに不満そうに頰を膨らませる。
この光景だけ見れば、至って普通の仲睦まじい姉弟である。
「今日は何するんだろうね」
「さあ。昨日は尾行ごっこだったけど」
「わたし、あれ嫌い。すぐバレちゃうの」
「姉さんは分かりやすすぎるよ」
「イルくんは得意だからいーよね!いいなあ」
運ばれてきた食事をAが食べ始めてから、イルミもようやく料理を口にした。微量の毒が混入している品々は、体に気怠さやしびれをもたらす。
イルミはこれが苦手だったが、Aは不思議と豪胆な胃を持っていて、毒物への耐性はピカイチだった。
オレは尾行ごっこが得意で、姉さんは毒に強いんだから、それでいいんじゃないの。
そう言いたくなる気持ちはあるが、Aがこの類の励ましで納得した試しがないから、黙々と毒物を摂取した。
「ご馳走さまでした。イルくん、行こ!」
「ご馳走さま。分かってるから、走らないで」
数日前に派手にずっこけたばかりなのに、この姉は走るのが好きらしい。
「あ」
また転んだ。
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くらげ(プロフ) - リメさん» 初めまして、閲覧ありがとうございます。小説を書くのは初めてなので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2018年9月19日 21時) (レス) id: 0096635b43 (このIDを非表示/違反報告)
リメ(プロフ) - 初めまして!とっっても面白いです!!くらげさんの文の書き方がどストライクすぎてすいすい読んでしまいました( *˙˙*) 更新頑張って下さい! (2018年9月19日 21時) (レス) id: d23165a5ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くらげ | 作成日時:2018年9月2日 4時