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一万ジェニーだけでは宿代としては心もとない。幸い、人数調整の都合上今日中にもう一戦ずつはできると聞かされ、二人は迷うことなくエントリーした。
控え室にはやはり大の大人ばかりがいて、小柄な二人は悪い意味でひどく目立った。馬鹿にするような失笑すら聞こえる。
Aはそれらに不快な顔は見せなかった。
よく考えれば、彼女にとって彼らの声は多少耳障りなノイズに等しく、音として認識はしても言葉として聞いていないのだから、当たり前といってもいい。
十分ほど待って、先に呼ばれたのはAだった。「上のロビーで待ってるね!」とはつらつと去っていったその言葉が盛大に大人を煽り立てたことを、本人は気づいていなかった。
そのすぐ後にイルミも呼ばれたために、嫌味な輩に絡まれる事態にはならずに済んだ。
◎
『さあ皆さまお待ちかね!今度の組み合わせはなんと!いたいけな少女と巨漢です!
ですが結果を決めるにはまだ早いですよ!VTRをご覧下さい、この通り!A選手は一階で対戦相手を再起不能の重体にしています!
この小さな体のどこにパワーが潜んでいるのでしょう!それでは皆さん、ギャンブルスイッチをどうぞー!』
四方八方を観客席に囲まれ、歓声も視線もリングに全て集中した暑苦しい空間にAは早くも嫌気のさした顔をしていた。
賭けと喧嘩が大好きなろくでもない人間達の食い物にされていることを本能で感じ取っているのだろう。
イルミと共にいた時の輝く笑顔はどこにもなく、むっつりと唇を尖らせた仏頂面である。
対戦相手の名はブーディといい、縦にも横にも幅のある巨漢だった。手の平だけでAの頭を覆うことができるほどの体格差がある。
そんな凸凹のマッチングだから、当然観客はほとんどがブーディの勝ちを予想した。オッズの偏りが激しい。
『それでは三分三ラウンドP&KO制、スタートでーす!!』
アナウンスの声が一際高らかに響き、審判が一歩下がった。
「お嬢ちゃん、今の内にリングから降りたらどうだい?痛い目を見るぜ?」
ブーディは元々悪い人相を更に醜悪に歪め、にやにやと脆そうな少女を見下ろしている。
提案はしていても、それを叶えてやるつもりがないのは明らかだ。死なない程度に嬲ってやろうと、下卑た意思がにじみ出ている。
Aは不機嫌さを露わにした表情で薄ら笑いをする男を見上げ、べえっと舌を出した。
ふてぶてしい宣戦布告。額に青筋を浮かべたブーディが、一直線に突っ込んだ。
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くらげ(プロフ) - リメさん» 初めまして、閲覧ありがとうございます。小説を書くのは初めてなので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2018年9月19日 21時) (レス) id: 0096635b43 (このIDを非表示/違反報告)
リメ(プロフ) - 初めまして!とっっても面白いです!!くらげさんの文の書き方がどストライクすぎてすいすい読んでしまいました( *˙˙*) 更新頑張って下さい! (2018年9月19日 21時) (レス) id: d23165a5ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くらげ | 作成日時:2018年9月2日 4時