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「あれは仕方ないよ。姉さんは殺すのは上手いけど倒すのは慣れてないから」

「でもでもでも!イルくんはちゃんとできたのにわたしはできなかったぁ!」


とうとう大粒の涙を流し始めたAに集まる視線を遮断するように立ち、ぐすぐすと鼻をすするあどけない姉に缶ジュースを差し出した。
つい先ほど手に入れたファイトマネーで購入したものだ。
甘いものが好きな彼女のために、並ぶ商品の中でも一際甘そうないちごみるくを買ってきた。これを突っぱねられたらもう打つ手がない。


「……イルくん、どうやって勝ったの」


真っ赤になった目元をこすって、Aはいちごみるくを受け取りイルミに聞いた。弟に頼ることを好まない彼女が早速精神的に成長した、いい証拠だ。
ほっと胸を撫で下ろして、イルミは隣に腰かけた。


「多分、向き不向きがあるんだと思うよ。戦い方にさ」


言いながらイルミはそうではないことを分かっていた。
戦い方だとかスタイルだとか、そんな次元の話ではない。対戦相手をヒトと見るか否かの問題だ。

イルミとて、殺す相手に同情を抱いたりはしない。人間の命を奪うことに今はまだ躊躇いが生じるが、いずれは慣れて何の感慨もなく心臓を止めることができるだろう。それが目標でもある。
しかしAは、そもそも相手をヒトとして認識していない。故に倒せない。
わざわざ殺さない意味を理解していないから、どうしたらいいのか分からないのだ。

それを指摘し受け入れることができたのなら、姉は完全になるだろう。
だがこの独特の価値観を曲げることは困難であろうし、なまじ人の命の重さを教え込んでしまったら暗殺に支障が出る可能性もある。
下手なことは言えず、詭弁で誤魔化すしか方法がない。イルミは慎重に言葉を選んだ。


「姉さんは的確に狙いすぎるから、わざと的をずらしてみたらどうかな」

「うー……?どういうこと?」

「心臓とか首とかじゃなくて、致命傷を与えない場所を狙うってこと。例えば足の腱を潰したら、死なないけど行動はできなくなるでしょ」

「んー、むー……やってみるけど……」


どうも納得できない様子のAは飲み終えた缶をゴミ箱に放り込み、再度挑戦するため受け付けに向かった。
姉の感覚を自身の頭に再現するとしたら、どんな例えが分かりやすいだろうか。
イルミは頭の中に、答えを知っているパズルを思い浮かべ、最適解を避けて手順をわざわざ増やす様を想像してみた。恐らくはこんな具合のはずだ。



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くらげ(プロフ) - リメさん» 初めまして、閲覧ありがとうございます。小説を書くのは初めてなので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2018年9月19日 21時) (レス) id: 0096635b43 (このIDを非表示/違反報告)
リメ(プロフ) - 初めまして!とっっても面白いです!!くらげさんの文の書き方がどストライクすぎてすいすい読んでしまいました( *˙˙*) 更新頑張って下さい! (2018年9月19日 21時) (レス) id: d23165a5ce (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くらげ | 作成日時:2018年9月2日 4時

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