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「とはいえ、暗殺にはコミュニケーション能力も必要だ。そろそろ外に出してやろうと思っている」
黙り込んだイルミが何を熟考しているのかにはあえて触れず、シルバは衝撃的な発言をした。
確かに、一口に暗殺といっても色々なやり方がある。時には標的と親しくならなければ殺せないケースもあり、正装で家を出るシルバの姿もあった。
しかし、以前同じような話になった時はキキョウが三日三晩シルバをなじり、しばらくは「幻聴が聞こえる」と眉を八の字にするほど参っていた。
それで懲りたと思っていたが、どうやらシルバは子どもを強かにするためには我が身すら犠牲にするらしい。
それにしたって家族以外には殺す標的しか接したことのないAだ。場所にもよるが、一体どんな反応を示すのか想像もつかない。
「六歳になったら天空闘技場で武者修行をさせようと計画していてな、今キキョウを説得している最中なんだ」
天空闘技場の名は聞いたことがある。強さを求めて高みに登る格闘のメッカと名高く、二年に一度のバトルオリンピアは中継で何度かその様子を見た。
嫌でも他人と関わり、戦わなければならない場所だ。そんなところに姉を一人放り込むなど冗談じゃない。
「オレも行く」
ほぼノータイムで切り返したイルミに、シルバが冷静に「何故だ」と質問を投げかけた。
そんなの決まっている、と言いかけてイルミは口ごもってしまった。冗談じゃないと考えはしたが、何故と問われるとその感情の源流が何であるのか判然としないのだ。
自身が抱く思いを抑制しがちだったのがここで災いした。望んでいることのはずなのに言語化ができず、イルミの目が泳ぐ。
「……心配、だから……」
じっとシルバに見つめられ、居た堪れない気持ちでようやく絞り出した言い訳は、この家に相応しくないチープなものであった。
父が目を細めた。きっと暗殺者としての評価は減点されてしまっただろう。見ていられずに俯いた頭に、ぽんと優しく何かが乗った。他でもない父の手の平だった。
「イルミ。お前は昔から、何にも特に興味を示さなかったな。そんなお前が自ら気にかける存在ができたのは、父親として喜ぶべきことだ」
「……暗殺者としては?」
「微妙なところではある。守りたいものがあった場合、強くなるタイプと弱くなるタイプがいて、お前はどちらなのかまだ分からない。
Aと一緒に行きなさい、イルミ。そこで自覚して、それから帰って来るんだ」
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くらげ(プロフ) - リメさん» 初めまして、閲覧ありがとうございます。小説を書くのは初めてなので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2018年9月19日 21時) (レス) id: 0096635b43 (このIDを非表示/違反報告)
リメ(プロフ) - 初めまして!とっっても面白いです!!くらげさんの文の書き方がどストライクすぎてすいすい読んでしまいました( *˙˙*) 更新頑張って下さい! (2018年9月19日 21時) (レス) id: d23165a5ce (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:くらげ | 作成日時:2018年9月2日 4時