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物心ついた頃から不思議には思っていた。どうして自分の髪は黒くて、姉の髪は金色なのだろうかと。
父も母も祖父にも金色の髪はいない。資料室でこっそり家系図を辿っても、金髪は一人として見つからなかった。

髪の色は民族で大別され、更に細かな部分は遺伝で決まる。
例えばゾルディック家では遺伝を重んじており、くせ毛の銀髪を持つ男児が家督を継ぐと決まっている。ゼノもシルバもそうだ。

そこにキキョウが嫁入りしたことで、シルバらの子どもはおよそ二種類の髪色を持つはずだった。銀か黒か。だというのにAは見事な金である。
民族的観点からみても遺伝的観点からみても、明らかにおかしい。

幼くも聡明なイルミは考えて、結果として「Aはこの家の正式な子どもではないのではないか」との結論にたどり着いた。
けれど当の本人が全く気にする様子もなく、また気づく兆しもなく、両親らも口に出さないデリケートな問題であることも同時に理解していたので、イルミはこれまでこれに関して触れずにいた。

だが、共同で仕事をしてAの価値観を知ってしまった今、だんまりを続ける訳にもいかなくなった。

──もしもAが本当の家族ではないと気がついてしまったら?

家族に対して(・・・・・・)は純真無垢でいたいけな少女だ。無償で血族を愛し、己も愛されるだけに値する可愛らしい少女。
そんな彼女が、何よりも大切にすべき家族が実は他人──つまり、今までゴミ同然として見ていたモノ達と同じであると知ってしまったら。

果たして正気を保っていられるか、定かではない。


イルミはAが好きだ。
一所懸命姉として振る舞い、厳しい修行にも食らいつき、何事にも挫けない姉を尊敬しているし、自分にはない要素を持ったAと一緒にいて楽しい。

幼いが故に種類は定かではないが、この感情はイルミが初めて他者に抱いた愛情に違いなかった。
愛し愛される理想的な関係。それが崩れ去る可能性があると思うと、指先が冷たくなるほど恐ろしい。

例えゾルディック家がAを家族と思い続けるとしても、本人が家族と思えなくなってしまったら、もう二度とあの笑顔を向けられることはないのだろう。

道端に捨てられた吸い殻を見るような。吐き捨てられた吐瀉物を一瞥するような。積み重なった粗大ゴミにほんの一瞬脇目するような。
あの冷ややかな瞳が自分に向けられるかも知れないことが、これ以上なく怖くてたまらないのだ。



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くらげ(プロフ) - リメさん» 初めまして、閲覧ありがとうございます。小説を書くのは初めてなので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2018年9月19日 21時) (レス) id: 0096635b43 (このIDを非表示/違反報告)
リメ(プロフ) - 初めまして!とっっても面白いです!!くらげさんの文の書き方がどストライクすぎてすいすい読んでしまいました( *˙˙*) 更新頑張って下さい! (2018年9月19日 21時) (レス) id: d23165a5ce (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くらげ | 作成日時:2018年9月2日 4時

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