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ゾルディック家長女、A=ゾルディックの朝は糖蜜のような声で始まる。


「Aちゃん、朝よ。ご飯ができているから起きなさい」

「うー……あとちょっとー……」


流星街に棲んでいた当時から可愛らしいものに憧れていたキキョウは、娘であるAにとことん甘い。
朝起こすのだって、修行を担当するシルバに任せると水をかけて起こしかねないと自ら優しく揺り起こしている。


「パパも待っているわよ。早く起きないと、また怒られちゃう」

「やだぁ、痛いのきらいー……」


乳飲み子の時からそうして甘やかされていたAはその自覚があって、キキョウを相手にすると途端にわがままさんになる。
けれどもキキョウには、Aを一声で起こす魔法の言葉を持っているのだ。


「イルミはもう起きているのに……」

「え!?イルくん、起きちゃったの!?」


イルミ。Aを拾ってからすぐに授かった息子の名前を出すと、先ほどまでの駄々が嘘のように布団を跳ね除けて起き上がった。

Aは五歳、イルミは四歳。たった一つしか違わないというのに、その一つの違いにAは強い意識を持っており、イルミに対して何かとお姉ちゃんぶりたがるのである。
修行だってイルミにAが着いて行っているようなものなのに、一歳年上だからとAは言って聞かない。


「どうしてもっと早く起こしてくれなかったのお!?今日こそイルくんを起こしてあげようと思ってたのに!」

「イルミは決められた時間の一時間前に起きて自主トレをしていたわ。Aちゃん、気持ちよさそうに寝ていたから……」

「うーっ、イルくんのばか!ご飯は!?」

「まだよ。先に食べたら姉さんが拗ねるから、ですって」

「拗ねないもん!」


半分泣きそうになりながらバタバタと着替えと洗顔を済ませる。服を脱ぎ着する度に揺れる髪は、シルバのものともキキョウのものとも違う金色をたたえている。

冬の満月のように輝くその色彩は、彼女がゾルディックの正当な血筋でないことを雄弁に語る。
いつかは話さねばとは思うが、キキョウはそれを打ち明ける機会をいつにすべきか決めきれていない。


「終わった!行ってきます、お母さん!」

「はい、いってらっしゃい。気をつけてね」

「うん!」


一切の疑いなく自分を母と慕ってくれる拾い子。
まだこの世界の闇を知らない純朴な瞳を前にして、胸の内に秘めた事実を明かす勇気が、どうしてそう簡単に出せようか。

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くらげ(プロフ) - リメさん» 初めまして、閲覧ありがとうございます。小説を書くのは初めてなので、そう言って頂けて嬉しいです。頑張ります! (2018年9月19日 21時) (レス) id: 0096635b43 (このIDを非表示/違反報告)
リメ(プロフ) - 初めまして!とっっても面白いです!!くらげさんの文の書き方がどストライクすぎてすいすい読んでしまいました( *˙˙*) 更新頑張って下さい! (2018年9月19日 21時) (レス) id: d23165a5ce (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:くらげ | 作成日時:2018年9月2日 4時

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