【ヒロアカ】必要としてくれたのは、ヒーローではなく (ページ4)

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偽善者。だからその人を助けたのはほんの気まぐれだった。

いつも通り、私は帰り道の寂れた商店街を歩いていた。しかし微かな違和感を抱く。いつもと雰囲気が違うのだ。

その原因はすぐにわかった。

黒いスーツを着た強面の男たちが商店街をウロウロと歩き回ったり、血走った目を忙しなく左右に動かしているのだ。まるで何かを探しているかのように。

彼らは警察関係の人で、何かの事件の犯人を探しているのかと思ったが、すぐに違うと思い直す。捲ったスーツの腕には刺青が彫られていた。まるでヤクザだ。

さっさと家に帰ろう。

そんな私の耳に荒い息遣いが届いたのは、薄暗い路地裏の前を通りかかった時だ。

『…？』

路地裏の奥の方、暗がりの中壁に背を預ける男の脇腹からは血が流れていた。男は黒いYシャツを着ていたが、そのどす黒い赤は不思議と私の目にくっきりと焼き付いた。私は息を止める。

その時、ある考えが私の頭を過った。それは果てしなく私を不愉快にさせる思いつきだった。しかしやる価値はあった。

私は路地裏に足を踏み入れる。男は肩を震わせこちらを見た。

『どうしたのお兄さん、その怪我。救急車呼ぼうか？』

普段の私なら絶対に吐かない台詞。

男は訝しげに私を見る。

「やめ、ろ…。どっか行けよ…、ッ」

相当痛いのだろう。顔を歪めながら私にそう吐き捨てた。

『お兄さんもしかして追われてる？向こうで黒いスーツ着た人たちが走り回ってたよ。

……ほら、もう来たみたい』

路地裏の奥の曲がり角からドタドタとこちらに向かって近づいてくる足音が聞こえた。

「っ、クソ、、！」

『動かないでね』

私は素早くお兄さんに近寄り、お兄さんの肩に手を回してグイッと引き寄せた。

「！？何やって、」

『喋らないで』

やがて先程の黒スーツの男2人が角から現れた。

片方の男が口を開ける。

「くそ、あの野郎どこ隠れやがった」

「こっちにはいねぇみたいだな…」

「しらみ潰しに行くぞ。あの怪我だ、そう遠くには行ってねぇだろ」

そう言って私たちの前を通り過ぎ、見えなくなった。

お兄さんが驚きの表情で私を見る。

『私の個性。なんなら家まで送ろうか？』

お兄さんの綺麗な金髪が揺れる。その瞳には憎悪の色が浮かんでいた。

「ふざけんな、クソガキ。ヒーロー気取りかよ…」

『うん』

「？」

『最悪な気分だよ。偽善者って疲れるね。ヒーローなんて、よくやってられるよ』

私はお兄さんの身体から手を離し、そのまま路地裏から出た。

あー、胸糞わる。