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この時、この瞬間、
穏やかな笑みを浮かべる、
どこかいつも人間離れした、私の中の彼の
"総統"
という外皮が剥がれ落ちた瞬間だった。
『……グルッペンさん』
「！」
『駄目ですか』
そう呼んでは。
拒否されてしまうだろうか。
今初めて貴方のことを、大軍を引き連れ、国民を導き、国の行く末を切り開く"総統"ではなく、
"グルッペン・フューラーという名の個人"と思えたというのに。
「_________駄目な訳が、ないだろう」
「何ならグルさんでもいいんだゾ、グルッペンでも」
『いえ、それはちょっと…』
「それにしてもどうしたんだ、急に。
お前、ずっと妙に畏まっていただろう」
『…やっと貴方が"人間"に見えたんですよ』
「何だそれは。俺を化け物か何かだとでも思っていたのか？」
『そんなとこです』
「何だと」
どこかくすぐったい感情を誤魔化すように、私は薄い笑顔を張り付けて、総統室へ向かう足を早めた。
・
【始原と根拠の形而上学】という題名の本の表紙を閉じ、両の目頭を押さえた。
此処は総統室、もっと言えば総統サマ…グルッペンさんの隣。
床に敷かれたカーペットの鮮やかな赤に胸焼けを覚え、私は全ての視覚的情報を遮断するように瞼を閉じた。
紙面に綴られた白黒の文字を追い続けた後の世界は、こんなにも色取り取りで眩しく、目が痛くなってしまう。
「もう読み終えたのか」
『はい、面白かったです』
丁度彼も書類仕事に一段落ついたのか、二人して背筋をぐぐっと伸ばし、その動きが見事にシンクロしていたことに気付いて、顔を見合せ笑い合った。
そして、彼はサイドテーブルに置いてあった銀のトレイを引き寄せ、切り分けられたガトーショコラとティーカップを私の目の前に置く。
「今日はガトーショコラを作らせたんだ。内の料理長の作る菓子は一級品でな、お前の口に合うと良いのだが…」
言いながらグルッペンさんが紅茶を注ぐと、部屋に芳ばしい紅茶の香りが漂う。ふっと心が安らぐような、優しい香りだ。
一口ケーキを切り取り口へ運べば、甘過ぎず苦すぎない、絶妙なバランスの取れた優しいチョコの味が口一杯に広がる。口の中で柔らかく溶けるそれの美味しさと言ったらない。
「…顔、ゆるゆるだぞ」
『美味し過ぎます』
「そうだろう？」
ポンポンとグルッペンさんに頭を撫でられる。
私は少々恨めしげに彼を見上げた。
『…ずっと思ってたんですけど、何か失礼ではありませんか。
総統ともあろう御方が軽々しく
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お月様 - 滅茶苦茶おもろかったです！待ってたけどようやく27話でロボロさんの所出た！続編おめでとうございます！ (2021年1月2日 17時) (
レス) id: b347abc4d4 (このIDを非表示/違反報告)
セツナ - 火ぃつけろ火ぃぃぃぃ！！！wwww腹筋バキバキになったんですけど腹筋返して（）神様お疲れ様です！ (2020年5月26日 21時) (レス) id: 274ac26baa (このIDを非表示/違反報告)
しゃち - 43の最初にある有限実行の“限”は“言”ではないでしょうか？勘違いでしたら申し訳ございません。ラットさんの作品大好きです！ (2020年4月16日 13時) (レス) id: 6540cc437a (このIDを非表示/違反報告)
蓮 - うますぎませんか！？画力をわけて！！更新頑張ってください！！応援してます！！ (2020年4月3日 23時) (レス) id: 5db7ec7919 (このIDを非表示/違反報告)
楓@卍教 - 絵も文もうまいだと…？神…？いや天才…？(錯乱)まじで好きです応援してます (2020年3月21日 15時) (レス) id: 84c734c3e6 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ラット
| 作成日時：2019年11月16日 21時
