24 ページ25
いつの間にやら私の真後ろに立っていたのは、昨日総統サマを城に送った際、私のような初対面の女の前で、嬉しさの余り盛大な泣き笑いをかましたコネシマさんだった。
…今のは少し言い方が悪かっただろうか。別に彼の品性を貶めるつもりはないのだが。
「おん、おんっ許す！全然許すで！
アンタを拒む理由がないもんなぁ！今度個人的にも何か礼させてな？
な？」
彼はブンブンと首を振り、大きな八重歯を剥き出し笑って、ありったけの肯定を示してしてくれた。
嬉しさに揺れる犬の尻尾の様なその勢いに少し引いてしまったが、彼は特段気にしていない様子だ。
『そ、そうですか』
「あと、昨日はハンカチもありがとうな。
……部下に情けない泣き顔見られずに済んだわ」
『それはどういたしまして』
「ん。
あと、あんた…あー、Aって呼んでもええ？いい加減"あんた"っていうの嫌やわ俺」
『いいですよ』
許可を取れば彼は屈託なく笑う。
「ほな、Aが城に住むの否定な奴、少なくとも幹部にはおらへんで。
昨日緊急会議開いて、…ていうかグルさんが勝手に開いたんやけども。…まぁ、ほんでAのこと色々話し合って、結果"全員の合意の元"ゾムに迎え任せたからな。
人選間違ってもーたんやけど。素早さ重視でゾム選んだらあんた凍えてもーたし」
『…』
…成る程、だからこそ、
『…昨日の時点で私を城に迎え入れるということは既に決まっていて、だからこそ今更異議を唱える者などいないと？』
「そういうことやな」
私は一つ息を吐き、総統サマに目を向けた。
『昨日の時点で私が国境を越えていたらどうするつもりだったんですか』
「兵力を割いてでも探していただろうな」
『そんな下らないことに軍を使わないでください…』
「下らない訳がないやろ。自分とこの国家元首救ったあんたっていう人間が、俺達にとってどんだけ大きな存在か、あんた分かっとらん。
言っとくと、恩返すまではグルさんだけでなく俺達もあんたを逃がせんからな？」
まるで宣言する様なトントンさんの強い言葉に、私は少しげんなりした。
この人達の言う"恩を返すまで"というのは、即ち"病気が完治するまで"という意味合いに違いなく、治る見込みのない自分の睡眠障害に諦めさえ感じていた私は、この人達に逃がして貰えるのは果たしていつになるのだろうかと思いあぐねていた。
…だが、ここまで豪語するからには何かしらの策があるのかとも思う。
実際、この眠れない体質が治れば私にとってそれ程嬉しいことはないけれど。
…少しは、期待しても良いのだろうか。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 3745人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「軍パロ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
お月様 - 滅茶苦茶おもろかったです！待ってたけどようやく27話でロボロさんの所出た！続編おめでとうございます！ (2021年1月2日 17時) (
レス) id: b347abc4d4 (このIDを非表示/違反報告)
セツナ - 火ぃつけろ火ぃぃぃぃ！！！wwww腹筋バキバキになったんですけど腹筋返して（）神様お疲れ様です！ (2020年5月26日 21時) (レス) id: 274ac26baa (このIDを非表示/違反報告)
しゃち - 43の最初にある有限実行の“限”は“言”ではないでしょうか？勘違いでしたら申し訳ございません。ラットさんの作品大好きです！ (2020年4月16日 13時) (レス) id: 6540cc437a (このIDを非表示/違反報告)
蓮 - うますぎませんか！？画力をわけて！！更新頑張ってください！！応援してます！！ (2020年4月3日 23時) (レス) id: 5db7ec7919 (このIDを非表示/違反報告)
楓@卍教 - 絵も文もうまいだと…？神…？いや天才…？(錯乱)まじで好きです応援してます (2020年3月21日 15時) (レス) id: 84c734c3e6 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ラット
| 作成日時：2019年11月16日 21時
