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天才103 ページ6

大理石で造られた手すりに私を座らせると、彼は風に揺れる私の髪の毛を酷く愛おしそうに撫でた。



「綺麗だなァ…四の五の言ってないで、早く俺の物になってくれないか」



_______あぁ、他の女だったらすぐさま堕ちてしまうような…歯の浮くような台詞だ。

薄皮を一枚剥がしてしまえば、ドス黒く淀んだ醜い欲望しかそこには無いというのに。



『貴方次第でしょうそんなの。



そんなことより……



…総統、ちょっとお願いがあるんですよ』



総統はその長い睫毛を揺らし、こちらに焦点を合わせ…

たのと同時に、私は彼の頭を両手でガッと掴み、その瞳を覗き込んだ。



流石に驚いたような顔をした彼は、その目を大きく見開く。



端から見れば恋人同士が愛の言葉を囁き合うこの距離も、私達の間では策謀と取引を交わすものでしかない。









『______貴方が私につけた見張り…アレ、外してもらえませんか?鬱陶しくて仕方ないんですが』









「…」








見張り…というのは、言わずもがな今回のスパイ騒動に当たって私を監視している見張り役のことだ。ゾムさんの瞳の翡翠色が、脳に鮮烈に蘇る。

彼は一瞬視線を斜め右へと反らし、そしてまた、いつもの笑みを浮かべた。



「見張りをつけたのは俺じゃないゾ。
トントンだ」



『どっちにしろです。動き辛いったりゃありゃしないんですよ此方は』




「お前、スパイなのか?」



私はふっと息を吐いて、総統の頭を掴んでいた手から力を抜いた。それはダランとだらしなく宙に揺れる。

私はふわりと笑みを浮かべた。



『なわけないじゃないですか』



「あぁそうだろうな」



…こいつ、面白がってる。
つくづく気に食わない男だ。



『はぁ……ただ貴方達が私を疑うから、私は私で行動せざるを得ないだけですよ』



諦めたように、そう吐き捨てる。



「見張り…か。お前にはアイツらが見張り役に見えるのか。


…アイツらは、お前を守っているんだゾ」



私は彼の言葉に首を傾げた。
一体何のことを言っているのか、理解出来なかったのだ。



『…何から?』



露骨な疑問符を浮かべる。
まさか内通者が私を狙っている訳ではないだろうな…

…いや、断じてそれはない。そんな足がつくようなことをするメリットなんてない。



彼の回答は、私が思い浮かべたそれとは180゜違うものだった。というか、完全に不意を突かれた。



「お前、何かする気だろう。それこそ命を落とすかもしれないような危険を伴う事を」



『!』



ギクリとした私は思わず生唾を飲み込む。






何故それを知っているのか。

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作品ジャンル:恋愛
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あいまいアイン(プロフ) - 度々読み返しにきてしまう... (4月12日 12時) (レス) @page10 id: cc2cd4c541 (このIDを非表示/違反報告)
あまね(プロフ) - いやもう好きすぎてなきそう (10月2日 15時) (レス) @page9 id: 2b125e9969 (このIDを非表示/違反報告)
ミルク(プロフ) - 久々に見返しに来ました。何度読んでも飽きない天才ちゃんと主役達の掛け合いやストーリーの展開が大好きです!ラット様の気持ち次第になると思いますがこの世界が再び動き出すのを楽しみに待っています。 (9月19日 13時) (レス) @page9 id: 921529831b (このIDを非表示/違反報告)
あいまいアイン(プロフ) - 久々に見返しにきました。皆さんとのやりとりや思惑が蠢いていて楽しかったです。いつまでも更新をお待ちしています! (5月11日 16時) (レス) id: cc2cd4c541 (このIDを非表示/違反報告)
名無し - お願いします何億でも持ってくるので更新してください続きが読みたいです土下座します頼みます一生のお願いです素晴らしかったですありがとうございます†┏┛墓┗┓† (2022年12月3日 3時) (レス) @page9 id: d250e097ee (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:ラット | 作成日時:2019年4月11日 22時

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