天才85 ページ37
Aの首をより一層強く絞め上げると、彼女の顔は苦痛に歪み、その瞳からはポロポロと大粒の涙が溢れ出した。
『やめて』『総統』『痛い』『苦しい』
その唇から漏れ出す言葉の全ては俺を否定する。
それがひたすらに気に食わなかった。
そしてそんな苛立ちとは対照的に、俺が与えた痛みで涙を流す彼女は何て可愛らしいのだろうかと、俺は酷く甘やかな気持ちになる。
俺の指を掴んで引き剥がそうとするその手も、恐怖で震える脚も、鼓動する心臓も、俺は壊すことができる。
…いいな、それ。今ここで殺してしまおうか。
そうすればこの少女は永遠に俺の物だ。
欲望に駆られる俺の脳内に、しかし邪魔が入るようにあの時の【誓い】が牙を剥く。
______ここに誓おう。
いつかお前を、この俺が完全に___________
フ…と俺の手から力が抜けた。
それとほぼ同時に、色合わせをしたかの様な漆黒の瞳は絶望を写し、糸の切れた操り人形の様にAは膝から崩れ落ちた。
それを俺は両手で受け止め、そしてそのまま抱き締める。
「…」
ふわりと鼻腔に届く、花の様な優しい香り。
その瞼は固く閉じられたまま、恐らく数時間は開くことはないだろう。
俺はAの身体を抱き上げて、部屋から出た。
ようやく辿り着いた自室のベッドにAを横たわらせ、彼女の髪を触り、頭を撫でる。
「…ヤバかったな」
危うく殺してしまいそうになったし、襲ってしまいたくもなった。
あの時自制が効いたのは何かの偶然だ。
それか、思いもよらぬ彼女の強運が動いたか。
傷付けたい。
愛したい。
馬鹿みたいにそんな考えしか回らなかった。
「_________なぁ、A」
暴走する欲望を敢えて殺したのは、まだ彼女との【誓い】を果たしていなかったからだ。
「あの時俺は、お前のその細い首を折ってやることだって出来たんだゾ」
答えなど返って来るはずもない。
彼女は眠っているのだ。
首筋の皮膚には、首輪では隠せない程の広範囲に渡って指の形をした赤黒い痣が残っていた。
俺の手より一回り小さい彼女の手を握る。
氷みたいに冷たい。
俺はふっと笑い、その手も毛布の中に仕舞う。
これ以上身体を冷やして、また体調でも悪くなったら堪らない。彼女は虚弱なのだ。
「お前はつくづく、人の心を乱すなぁ」
お前がもし俺の【誓い】を、
俺への服従をはね除けたその時は、
お前を殺し、ガラスの棺の中に入れて、
そして今度こそ、永遠に側に置いてやろう。
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暁 - あれ...grさんヤンデレ...？ (9月7日 17時) (
レス) @page38 id: 1fc9dc00b9 (このIDを非表示/違反報告)
紺 - マンちゃんの反応面白すぎる 天才90とか (2021年9月17日 22時) (レス) id: 194369b6a7 (このIDを非表示/違反報告)
かい - ラットさん、この小説大好きです！これからも無理をしないていどに頑張って下さい！これからも応援してます！ (2020年2月25日 13時) (レス) id: caec64c12b (このIDを非表示/違反報告)
ナナ(プロフ) - Look What You Make Me Do 好きなんですが、どの辺りが似てる？んか気になります！ (2020年1月6日 2時) (レス) id: 83cb691048 (このIDを非表示/違反報告)
猫好き - しんぺい神さんが常識人に見えてくる…w (2019年6月6日 1時) (レス) id: fdca804d9b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：ラット
| 作成日時：2019年3月11日 0時
