short story

8□恋、始めました ページ16

合コン行かない？そんな誘いも月に何回かある。
あの人ならAのことわかってくれるよ、なんて友達に言われたことがある

それでもなかなか一歩を踏み出せなかった。

彼氏がいたのはちょうど1年前。
その頃は人生最大の恋をしてる、なんて思ってたけど
今となっては悲しい思い出でしかない。

別れた理由は至ってシンプル。
ずっと信頼して、私のことを見てたはずの彼が浮気をしたことだった。
しかも自分で目撃するっていう最悪のオチで。

そんな時に、幼なじみにこの人なんかどう？なんて
パッと見クールでかっこいい系な彼。
なんでこんなイケメンを紹介するんだろう、なんて思ったけど、彼の言葉に少し驚いた。




「この間、練習見に来てくれたじゃん？その時に、Aのこと気にしてたから」

「…気にするってなにを」

「あいつ傷心中なんですよーって言ったら、可愛い子が浮気なんかされるんだな、だって」

「…可愛い？」

「そ。まささんの口からそんな言葉出るとは思わなかったかど」

「ねえ。ちょっと待って」

「ん？」

「それ、私だいぶ可哀想な人みたいになってない？」






ああ…そう言って、顎に手をやる幼なじみ
…もとい世間でキャーキャー言われてる石川祐希
石川祐希、あなた口軽いね
そう言った私の言葉になんでフルネーム？
そう言ってくる彼に嫌味たっぷりこもってるからって言ったら笑われた。
あんなクールイケメンに可愛いなんて言われるの嬉しい限りだけど。




「あ、まささーん」

「え、」




いま話題に上がった人が、こっちに歩いてきた
私の顔を見るや否や会釈する彼に私も会釈をする。





「柳田さんこんにちは」

「どうも。今日も応援？」

「いやいや。呼ばれただけです」

「え、俺の応援じゃないの？」

「口の軽い石川祐希の応援は致しません」

「…どっかで聞いたことある台詞」




そう言って笑う柳田さん
その笑顔にみんなキャーキャーしてることは本人はわかってるのだろうか？

柳田さんとはほんと挨拶交わすぐらいで、仲良いとかそんなんじゃないけど
私にとっては、彼は祐希の仲間で。彼にとっては、私は祐希の幼なじみで。
そのぐらいの印象だと思う。

ただ、さっきの祐希の言葉だけが頭の中を駆け巡る。
否が応でも気にするでしょう。







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