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You side.
終わった。
終わらせた。
私の3年間。
意外と呆気なかったな。
あんなにも手放したくないと思っていたのに、終わってしまえば不思議と心が軽くなった気がした。
すっかり日も落ちた薄暗い帰り道を歩く。
冷え込んだ空気が頬にチクチクと刺さって痛い。
家まであと半分。
パチパチと消えかけた街灯の下で携帯を弄りながらマフラーに顔を埋めた人影が見えた。
「え....」
「おかえり」
私に気付いた彼は携帯をポケットに突っ込んでゆっくりと距離を詰めた。
「なんでいるの?」
「何でって、」
言い掛けた言葉をそのままに彼は徐に自分のマフラーを解き、私の首に巻きつけた。
「寒いかなぁって」
彼の体温で温まったマフラーがやけに優しく感じた。
「腹減んね?」
「あ、デリバリー、」
頼んだまま部屋に置きっぱなしにしていたことを思い出した。
「あっため直して食うか」
「目黒くんの分ないよ」
「じゃあ俺の分も頼む」
「何にすっかなぁ」なんて言いながらスマホの画面をスクロールしている彼を横目に家までの帰り道を並んで歩く。
彼が普通に私の家でご飯を食べることを前提に注文をしているのを、何の気無しに受け入れている自分に少しだけ驚いた。
気付いたら、彼に相当な信頼を置いていたみたい。
でもそれも悪くなくて、今は独りじゃなくて良かったってちょっとだけ思った。
「.....ありがと、」
小さく呟いた私に視線だけくれた彼は、下を向きながらフッと笑みを溢した。
言いたいこと、全部見透かされてるみたい。
彼は私の頭をわしゃわしゃっと撫でて、「月、綺麗だな」と呟いた。
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cleam(プロフ) - たむたむよーぐるとさん» 本当ですか....!たくさんの作者様の中から選び、読んでくださりありがとうございます!目黒くんの良さが伝わって良かったです(TT)これからも頑張りますので、どうぞ宜しくお願いします! (2020年10月26日 9時) (レス) id: d9a9e1fa04 (このIDを非表示/違反報告)
たむたむよーぐると(プロフ) - cleamさんのお話が今まで出会った作品の中で大好きです。最近、目黒さんが短髪にしたのでわんこ感と言いますか、この作品に今の目黒くんが凄くあってる気がして最後まで幸せに読ませていただきました。これからのお話も楽しみにしてます! (2020年10月25日 22時) (レス) id: 7d93851ad3 (このIDを非表示/違反報告)
cleam(プロフ) - センさん» ありがとうございます!そう言ってもらえると書いていてよかったなと思えます(TT)読んでよかったと思ってもらえるように頑張りますので最後まで宜しくお願いします! (2020年10月22日 22時) (レス) id: d9a9e1fa04 (このIDを非表示/違反報告)
セン(プロフ) - とても大好きなお話です。切なくて、でもそれぞれの気持ちも分かるし。かなり真剣に読ませて頂いております笑これからも応援しています!更新お疲れ様です。 (2020年10月22日 11時) (レス) id: 0585149188 (このIDを非表示/違反報告)
cleam(プロフ) - あゆささん» コメントありがとうございます!そんな気持ちになっていただけて嬉しいです(TT)私も書いていて、めめふか両方とも幸せになる道を探してしまいました....是非、最後までお読みいただけると嬉しいです! (2020年10月21日 22時) (レス) id: d9a9e1fa04 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:cleam | 作成日時:2020年10月9日 21時