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アイツが勝手に告げた約束の日。
あれが適当な口約束である事を願っていたけれどそんな願いは叶わなかったらしい。
仕事帰りに家に帰ると、相変わらず薄いシャツ1枚で私の部屋の前に座り込んでいる人影。
「....おっそ」
私の姿を視界に入れた彼は不機嫌そうに立ち上がる。
すぐに踵を返してその場を去ろうとすれば、グッと腕を掴まれ立ち去る事を邪魔された。
「どこ行くんだよ」
「どこって別に....」
「約束、まさか忘れたわけじゃねぇよな?」
掴まれた腕を振り解こうとしても、強く掴まれていて逃げられそうにない。
「帰って....もう会うつもりないから、」
「だから何でかって聞いてんの。今来ればまたお前が1番になれるよって言ってんのにさ」
私の願いは彼に伝わることはなさそうだ。
「もう会いたくない、それが全てだから、」
「....何それ。てかさ、お前いーの?こんな外で言い合いしてたらお前がホストに入れ上げてんの隣近所にバレっけど」
フッと煽るように笑う彼。
今はちょうど仕事終わりの時間帯。
近所の人たちにこんな言い合いの場を目撃されたら、白い目で見られてしまう。
何より、目黒くんにこんなところを見られたくない。
....でもこんな状況を作り出されておいて「はいどうぞ家に上がってください」なんて言うほど馬鹿ではない。
一体どうしたら、
「....Aさん、?」
背中の方から聞きたくなかった声がする。
「....目黒くん、」
あぁ....最悪だ。
一番見られたくない人に見られてしまった。
今まで部屋着姿を見せても、汚い部屋を見せても、まだ「まぁいっか」なんて思えていたけれど、こんな姿だけは見られたくなかった。
「違うの....あのね、」
「あれ、目黒じゃん」
「え....知り合い?」
「うん。コイツ、俺んとこで内勤してるやつ」
目黒くんは黙ったままゆらりと伸ばした手で腕を掴み、自分の胸の中に私を引き込んだ。
「は、お前何してんの?」
「困ってそうだったんで。しつこいと嫌われますよ」
「お前には関係ねぇだろ」
私を掴んで引き戻そうとする手を振り払い、キッと強い視線を送る目黒くん。
2人の睨み合う視線。
異様なくらいピリついた空気に恐怖すら感じた。
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cleam(プロフ) - あちゅ。さん» ありがとうございます....!実際に体験を....😳懐かしさまで感じていただけるなんて光栄です😭そして別作品にも興味を持ってくださりありがとうございます( ; ; )とっても嬉しいです( ; ; ) (2021年12月25日 23時) (レス) id: c295088e12 (このIDを非表示/違反報告)
cleam(プロフ) - Yuiさん» ありがとうございます( ; ; )感情移入までしていただけるなんてとても嬉しいです( ; ; )待ち望んでくださる方がいてとても幸せです。残り数ページで短編を投稿することにしたので、最後まで楽しんでもらえたら幸いです。 (2021年12月25日 23時) (レス) id: c295088e12 (このIDを非表示/違反報告)
cleam(プロフ) - しぇるさん» しぇる様、初めてのコメントありがとうございます....!そして嬉しいお言葉をありがとうございます( ; ; )余力がなくて移行が出来そうにないので、短編だけ書かせていただくことになりました....!続編を希望してもらえて光栄です。ありがとうございます( ; ; ) (2021年12月25日 23時) (レス) id: c295088e12 (このIDを非表示/違反報告)
cleam(プロフ) - saeさん» ありがとうございます( ; ; )他の読者様からも有難いことに続編希望のコメントを頂いておりまして、続きを書こうと思ったのですが移行するほどの余力もない為、残りの数ページで短編を書くことにしました....!楽しんでもらえたら嬉しいです。 (2021年12月25日 23時) (レス) id: c295088e12 (このIDを非表示/違反報告)
cleam(プロフ) - ラ イ スさん» ありがとうございます( ; ; )きっとめぐろくんと生活を送ることが出来たら、支え合って凄く良い家庭になりそうですね☺️ (2021年12月25日 23時) (レス) id: c295088e12 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:cleam | 作成日時:2021年11月13日 22時