【 ツキウタ。】誰かに優しくされたい時に 〜短編集 〜

【 faraway 】03 ページ13

海「おーい、A！起きてるか？」




コンコンと部屋のドアをノックする音が聞こえた。それがすぐ海の声だとわかり『起きてるよ』と返事をすると「飯できてるから、食べろよ。行ってくるな」と返してくれた。




『行ってらっしゃい』


海「おー、行ってくる」




パタパタと数人の足音が海の足音を追っていくのが聞こえた。身支度を整えて、共有ルームに行くと陽が朝食を食べているのがみえた。




陽「おはよー、Aちゃん」


『おはよう、陽』


陽「俺とAちゃんが同じ出発時間なんだって。あと30分後くらいに大ちゃんが迎えくるってよ」


『そうだったんだ。陽は今日…なんの仕事？』




準備されていた和食の朝食。今日は夜が作ってくれたのかな…




陽「俺は広告の撮影だったかなー。あ、そういえば隼とは連絡とった？」


『…いや、とってない』


陽「相変わらず奥手というか…なんというか」


『…隼があんなこと言うので初めてだったから、なんか…連絡するタイミングがわからなくて』




ぼんやりと陽を見れば、その本人は笑いを堪えられないというような様子で口元に手を当ててクスクスと笑う。それと同時にひとつ、わたしの口からため息が漏れる。




陽「ため息、吸わないと幸せ逃げるよ…なんて、隼なら言うんだろうな」


『…そう、かもね…』




毎日、明日こそは連絡入れようと思って…思うわりに思い止まって朝がやってくる。そうやって毎日毎日…何もできない臆病なわたしがいる。

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