30 お姫様 ページ30
天井の光が眩しいと感じた。重たい体を起こせば、同じように隼と始が体を起こしたところだった。
すぐに立ち上がった始が「怪我してるな?」と哀しそうに頬を撫でた。
隼「僕に任せて」
隼が始の手の上から自身の手を重ねて、ペリドットの瞳を閉じた。痛みが引いていく。
隼「僕の力と始の力が合わさったんだ。綺麗に治ってるはずだよ」
始が頬から手を離すと「全く…」と言って優しく笑った。わたしは始を抱きしめた。安心からか涙が止まらなかった。
始「…ったく、あっちでは泣いてないと思ったら…」
『…ごめん、なさい…!』
隼「ふふ、始?許してあげてよ。僕のために、頑張ってくれたんだ。ありがとう、僕のお姫様?」
隼の優しい手がわたしの頭を撫でた。始がため息をついてから「お前らは…」と言ってもう一度わたしのことを強く抱きしめた。
始「…さあ、隼…戦えるな?」
隼「いこうか、始」
『…始、わたしは…?』
始はため息をひとつこぼしてから「お前はここにいろ」と言った。 どうしてと言葉が溢れる前に心配性の王様が「もうこれ以上、お前に辛い場面を見せたくないんだ。お前は十分すぎるほど、世界の闇を見てきた。だから、ここで俺たちが帰ってくるのを待ってて欲しい」と言った。
隼「お姫様?僕もそうして欲しいな。必ず帰ってくるよ?だから…君は僕と始のことを思い続けていて欲しいんだ。それが僕たちの力になるから…ね?」
『…必ず…帰ってきてね?』
始「約束する」
そう言って始はわたしの頭を撫でた。ゆっくりと手が離れていく。隼が「あ、お姫様?」と優しく笑い何かを手渡してきた。
隼「お守り。持ってて欲しいんだ」
それは小さな小さな鍵のついたペンダントだった。
隼「君は僕の大切な鍵だからね。これがあればきっと…僕はまた君に会える。僕がいればきっと始にも会える。だから、持ってて欲しいんだ」
『…隼、ありがとう。必ず戻ってきてね。待ってるから』
隼「戻ってくるよ、僕のお姫様」
『…必ず…ね?』
閉じられていくモリオンの扉にもう一度だけ呟いた。
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衣里(プロフ) - 初めまして、全作品読ませて頂きました、懐かしくて涙が出てきちゃいました、紅縁、スクレボ、サバコレぜひとも書いて欲しいです。これからも頑張ってください (2019年10月6日 7時) (レス) id: a37957c804 (このIDを非表示/違反報告)
mel(プロフ) - みほさん» ありがとうございます。機会があれば書いてみたいなと思っていますが、円盤が出てからになるかと思います。申し訳ございません。 (2018年11月25日 19時) (レス) id: cd9818e417 (このIDを非表示/違反報告)
みほ(プロフ) - 初めまして。いつも楽しく読ませていただいてます。紅縁のストーリーを小説化してください。 (2018年11月24日 20時) (レス) id: 40d86cc87b (このIDを非表示/違反報告)
mel(プロフ) - ゆきさん» ありがとうございます!更新はゆっくりですがまた遊びに来てくださると嬉しいです!お待ちしております。 (2018年9月22日 17時) (レス) id: cd9818e417 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - melさんの作品全部大好きです。また新作の更新常に楽しみにしてます!!無理せず頑張って下さい! (2018年9月20日 23時) (携帯から) (レス) id: 11be993efd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mel | 作成日時:2018年7月30日 23時