18 お姫様 ページ18
『風が気持ちいい』
ぼんやりと呟いた言葉が風に攫われていった。バルコニーから眺める黒兎王国は綺麗だった。あの中に、自分の親もいるのだろうかと思うと少しだけ腹立たしいけれど…今となってはもうどうでもいい話だ。
「お一人ですか?」
『…え…?』
物思いにふけっていたら突然、後ろから声をかけられて手に持ったままだった仮面を顔に当てて振り返った。
『どちら様ですか?』
漆黒に溶ける男。背丈は隼と同じくらいだろうか…柔らかそうに聞こえる声のトーン、優雅な身のこなし…全て隼に似ている。なのに、この人は危ないと体が拒否をしている。
「誰…と聞くのは、仮面舞踏会ではあまり宜しくないのではありませんか?」
『あ…すみません。ホールでまたダンスが始まるみたいですが、戻らなくていいのですか?』
「貴女こそ、戻らなくていいのですか?」
彼がまた一歩わたしに近づく。逃げなければと思うのに体だけが動かない。動け動け動いて!
ふわりと彼の手がわたしの方に触れた。
『…貴方、』
「俺はお前を探していた。世界の鍵のお姫様?」
彼の口角が怪しげにあがり「さあ、その全てを俺に寄越せ。そして…アイツにもう一度、最高の絶望を」と残酷に言葉を紡いだ。
グッと手を引かれ、腹部に激痛が走った。
『…っ、な…に』
「あの男をこの世界から完全に消し去る唯一の方法。お前は生贄だ」
男の声がだんだん聞こえなくなっていく。アイツって、誰のこと…?生贄って…何?
自分の身は自分で守らないといけないのに。そう始に教えてもらったのに…!ゆっくりと意識がなくなっていく。始、ごめんなさい。
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衣里(プロフ) - 初めまして、全作品読ませて頂きました、懐かしくて涙が出てきちゃいました、紅縁、スクレボ、サバコレぜひとも書いて欲しいです。これからも頑張ってください (2019年10月6日 7時) (レス) id: a37957c804 (このIDを非表示/違反報告)
mel(プロフ) - みほさん» ありがとうございます。機会があれば書いてみたいなと思っていますが、円盤が出てからになるかと思います。申し訳ございません。 (2018年11月25日 19時) (レス) id: cd9818e417 (このIDを非表示/違反報告)
みほ(プロフ) - 初めまして。いつも楽しく読ませていただいてます。紅縁のストーリーを小説化してください。 (2018年11月24日 20時) (レス) id: 40d86cc87b (このIDを非表示/違反報告)
mel(プロフ) - ゆきさん» ありがとうございます!更新はゆっくりですがまた遊びに来てくださると嬉しいです!お待ちしております。 (2018年9月22日 17時) (レス) id: cd9818e417 (このIDを非表示/違反報告)
ゆき(プロフ) - melさんの作品全部大好きです。また新作の更新常に楽しみにしてます!!無理せず頑張って下さい! (2018年9月20日 23時) (携帯から) (レス) id: 11be993efd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mel | 作成日時:2018年7月30日 23時