ヘンテコ王子と雨 2 ページ9
止みそうになかった。ぼんやりとしていたらそろそろ移動しなければならない時間になっていた。
『行こうかな』
スタジオまでは徒歩で10分だし…タクシーでいけばいいか。なんて考えていた。
お店のドアが不意に開いて、ふと振り返ると見覚えのある白い髪。
隼「お姫様、お迎えに上がりました」
胸焼けしそうなほど、わたしをお姫様扱いしてくるヘンテコな王子がわたしを迎えにきた。
『ここ最近、隼がタイミング良すぎて…王子様すぎて扱いに困るんだけど』
隼「僕的にはそんなAを見てるの嫌いじゃないからもっと甘えてもいいんじゃないかな?」
そんなふうに言ってくる隼をいつもだったら、馬鹿みたいなこと言ってるんじゃないとか笑い飛ばすけど…ほんとこう言う時は王子様みたいに見えるから困る。
『全部、雨のせいってことにする』
隼「それなら僕は毎日、土砂降りがいいな」
センチメンタル。明日にはきっといつもみたいな関係に戻る。
隼「ああ、そういえば傘ひとつしかないんだ」
『…だからそういうところだよ!!この豪雨でひとつって…相合傘とかそういうレベルじゃないんだけど!?』
ほら、こういうところが計算なのか天然なのかわからない。ヘンテコ王子。
『もういいよ。行こう』
隼「僕は隣を歩けるだけで嬉しいよ」
そう言って何気なく隼はわたしの伝票を持ってお金を払ってしまう。うわ、もう…なんでいつもは何もしてこないのにこういうときだけトキメキを奪い去るんだろう。
『ありがとう…』
隼「うん?ああ、いいよ。ほら、行こう」
そう言って外に出ればさっきまでの豪雨が嘘みたいに小雨に変わっていた。ふと彼の顔を見上げれば…何故か口角が上がっていて何かしたのか聞いてみたら「僕とお姫様が歩きやすい天気になるようにちょちょちょっとおまじないをね」と言ってきた。非現実にも程があるのだけれど、彼はそういう人だ。
『…悔しいけど相合傘する』
隼「そうこなくっちゃ」
いつもなら絶対やらない相合傘なんかして、彼の背の高さを改めて感じて横顔がきれいだなって思った。
隼「こういうのも悪くないね」
『わたしもそう思う』なんてそんな甘いセリフは飲み込んだ。
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来栖陽香(プロフ) - サイコーです!年長さんファンになりました!始さんたちと隼たち関係性最高です!大好きです!これからも応援してます! (2018年4月30日 0時) (レス) id: 2a5ae7d310 (このIDを非表示/違反報告)
三日月 - 明けましておめでとうございます!この作品って続くんですか?楽しみに待ってます!これからも頑張ってください! (2017年1月2日 10時) (レス) id: 4dcfad7029 (このIDを非表示/違反報告)
あらたlove - あぁ、何回読んでも最高にかっこよくて…かっこよくて…ッ!!!なんかもうヤバイですね( ;∀;) カンドーシタ 続きを作って下さるなら、また私の幸せタイムが増えます(笑)いや、マジで← この作品すごく大好きです(*´∀`*) (2016年11月26日 10時) (レス) id: 3c6fe54d3b (このIDを非表示/違反報告)
にゃんこ - melさん» 見守りましたよ!ハッピーエンド最高ですね!最後まで読めてわたしは幸せ者ですな!続き期待してます待ってます!! (2016年11月25日 16時) (レス) id: abec577e28 (このIDを非表示/違反報告)
nana×翡翠(プロフ) - 最高のハッピーエンドですね、、、隼くんの誕生日に、こんなにも素敵な文章を読むことが出来てとても嬉しいです笑 (2016年11月24日 23時) (レス) id: 360bf5730a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mel | 作成日時:2016年9月15日 17時