束の間の2人の時間 4 ページ32
『隼!?』
隼「いいからついてきて」
洞窟のような場所を抜けて、光と人混みを横目に人魚姫が住むお城の前のベンチに座った。先ほどご飯を食べていたところよりは随分と静かな雰囲気が流れる。隼がチラッと腕時計をみて「そろそろかな〜」と呟く。
『何が?』
わたしがそう聞くと彼がわたしの口元に人差し指を当てて「いいから、あっち見てて」と言った。
温かい音楽に包まれて花火が上がる。
隼「素敵な時間が終わろうとしてるね」
打ち上がる花火を見ようと人々が足を止める。切り取られた時間の中にいるような気がした。
なんだかよくわからないけど涙が出てきた。隼が優しく手を握った。握られた手と触れ合う左側から優しい低い体温を感じる。肩に頭をもたれると隼がぽんぽんと優しく頭を撫でた。
悔しいな。隼はわたしのことをわかっていて。同じくらい愛してあげたいのにうまくいかなくて。それでも隼はそのままでいいよ。と言うんだ。
隼「いつも僕は思ってるんだ。始まりがあったら終わりがあるって。Aに出会って、君に恋をして恋人になって愛し合って」
『うん』
隼「終わりが来る日があるかもしれない。いつもそう思って僕は君のそばにいる」
『…寂しいね』
隼「僕と君がヒトである以上、必ずどんな形であれ別れはきてしまうからね。だから…」
隼が言葉を区切ってわたしの方を見た。花火はちょうどフィナーレで周りの人たちはわたしたちなんて見えていない。
隼「後悔しないようにいつもAのそばにいたいんだ」
そう言って、わたしをゆっくりと引き寄せてキスをした。今までで一番甘くて少しだけ切ない気がした。
隼「この幸せをずっと掴んでいたいよ」
『隼…』
握られた手に力が入ったのがわかった。それを握り返してあげると隼は少しだけ安心したように笑った。
隼「…行こうか」
『うん…』
隼「どうしたの?」
『好きだよ。隼のことが好き。そんなふうに心配事があってもわたしの前ではいつも王子様みたいなところも。よくわからない魔王様みたいな日も。悔しいけど、それが全部隼の魅力でわたしが大好きな隼で…むかつくくらい好きだよ』
隼は嬉しそうに目を細めて、わたしの手を引いて走り出した。
隼「でも僕の方がお姫様のこと好きだからね」
隼は笑った。そのあとわたしたちはあーだこーだ言いながらみんなにお土産を買って帰った。
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来栖陽香(プロフ) - サイコーです!年長さんファンになりました!始さんたちと隼たち関係性最高です!大好きです!これからも応援してます! (2018年4月30日 0時) (レス) id: 2a5ae7d310 (このIDを非表示/違反報告)
三日月 - 明けましておめでとうございます!この作品って続くんですか?楽しみに待ってます!これからも頑張ってください! (2017年1月2日 10時) (レス) id: 4dcfad7029 (このIDを非表示/違反報告)
あらたlove - あぁ、何回読んでも最高にかっこよくて…かっこよくて…ッ!!!なんかもうヤバイですね( ;∀;) カンドーシタ 続きを作って下さるなら、また私の幸せタイムが増えます(笑)いや、マジで← この作品すごく大好きです(*´∀`*) (2016年11月26日 10時) (レス) id: 3c6fe54d3b (このIDを非表示/違反報告)
にゃんこ - melさん» 見守りましたよ!ハッピーエンド最高ですね!最後まで読めてわたしは幸せ者ですな!続き期待してます待ってます!! (2016年11月25日 16時) (レス) id: abec577e28 (このIDを非表示/違反報告)
nana×翡翠(プロフ) - 最高のハッピーエンドですね、、、隼くんの誕生日に、こんなにも素敵な文章を読むことが出来てとても嬉しいです笑 (2016年11月24日 23時) (レス) id: 360bf5730a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:mel | 作成日時:2016年9月15日 17時