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こうして一緒にご飯を食べるのが当たり前になっていることが、すごく嬉しい。毎日こうやって過ごせたらどんなに楽しいだろう。
オッパと一緒にいると、自然と笑顔になる。でも、最近、それと同時に胸の奥がぎゅっと締め付けられるような感覚に陥る。その正体が何なのか分からなくて、ただ苦しくて。
「……ごちそうさまでした」
気が付いたら、もう食事を終えていた。
「片付けは私がやるよ」
「ありがとう。お願いするよ」
「任せて!」
空になった食器を重ねてキッチンへ運び、スポンジに洗剤をつけて洗っていく。
「あのさ……」
「ん?」
「最近、Aが元気ないっていうか、ぼーっとしてることがあるから……ちょっと心配で」
「え……?」
突然の言葉に思わず手が止まる。
「だ、大丈夫だよ!仕事にやっと慣れてきて、ちょっと疲れちゃったのかも…遅めの五月病みたいな感じかな?」
「そっか。もし何かあったらすぐ相談してね」
「うん、わかった」
オッパが心配してくれていることは素直にうれしかった。だけど、ぼんやりしている本当の理由はオッパのことばかり考えているからだなんて言えるわけがない。
泡だらけの手を水流で流し、皿を乾燥機に並べる。
「洗い物終わったよ」
「ありがとう。じゃあ俺もお風呂入ってくるね」
「はーい」
お風呂場へ向かうオッパの後ろ姿を見送る。私ははあ…と大きなため息をついて、ソファに倒れ込んだ。
「なんでこんな気持ちになっちゃうんだろう……」
今まで、こんな風に胸が締め付けられるような感覚は味わったことがなかった。一体自分の身体に何が起こっているのか分からない。
オッパのことを考えるだけで苦しくなるし、胸の奥がぎゅっと掴まれるように痛む。そして何より辛いのは、この痛みや苦しみは決して嫌なものじゃないということだ。むしろその逆――。
そんなことを考えているうちにだんだん眠くなってきた。まだ寝るには早い時間だが、瞼が重い。オッパがお風呂から上がってくるまでの間、少しくらい横になってもいいよね……。そう思いながら、私はゆっくりと目を閉じた。
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作者名:ann x他1人 | 作者ホームページ:https://plus.fm-p.jp/u/meltydaisy
作成日時:2023年6月10日 18時