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彼らの関係に気付いてから数日が経ったある日のこと。個人仕事を終え、皆が寝静まった深夜に宿舎へ戻ると、普段使われていないはずの物置部屋からなにやら音が聞こえてきた。こんな時間に誰だろうと不審に思いつつ、そっと扉を開けると、そこに鎮座する、古めかしいソファに座り込んでいたのは見覚えのある後ろ姿。
「……マシュー？」
思わず彼の名前を呼ぶと、彼はびくりと肩を震わせ驚いた様子で振り返った。窓から差し込む月明かりに照らされキラキラと輝く瞳からは大粒の涙がこぼれ落ちていて、頬を伝って床にぱたぱたと落ちてゆく。その姿があまりにも美しくて一瞬目を奪われたが、すぐに我に返ると彼の側へ歩み寄った。
「どうしたの？何か嫌なことでもあった？」
隣へ腰掛け、なるべく優しい声で問い掛けると、彼は小さく首を横に振った。
「ならどうして泣いてるのかな」
再び問うと、今度は少し間を置いてからぽつりと呟くような小さな声が耳に届く。
「……僕、たまに怖くなるんです。今がすごく幸せだから、いつかこの幸せが壊れてしまう時が来るんじゃないかと思って……そうしたら急に不安になっちゃって、たまにここに来て、隠れて泣いちゃうんです。みっともないですよね…」
困ったように笑いながら言う彼に胸の奥がきゅっと痛くなった。きっと誰にも言えなかったであろう気持ちを吐露してくれたことが嬉しくて、思わず抱き締めてしまいそうになる衝動を抑えながら彼を見つめる。
「へへ、誰にも見つかったことなかったのに。ジウニヒョンに見つかっちゃいました」
恥ずかしそうに目を伏せながら笑うマシューを見て、愛しさが込み上げてくると同時に、今まで感じたことの無い感情が芽生えた。独占欲。他の誰かにこの儚い笑顔を見せたくないという醜い感情。
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作者名：ann | 作成日時：2023年5月31日 22時
