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愛しい人を見つめる瞳、ほんのり紅潮する頬、少しだけトーンの上がった楽しそうな声。
その全てが、嫌いだ。
「ヒョン、聞きたいことがあって…」
ダンスレッスンの休憩中、俺の前を通り過ぎてハンビンの元へ駆け寄ったマシューを見て、心の底から湧き上がるどす黒い感情を押し殺すように唇を強く噛んだ。
明言こそしていないが、ハンビンとマシューは恐らく恋人同士だろう。俺は2人の関係を知っていた。いや、知ってしまったという方が正しいかもしれない。
人気のない階段の隅で声を押し殺して泣くマシューを見たあの日、初めて自分がマシューに恋をしていることを知った。そして同時に失恋もした。マシューに声を掛けようと一歩足を前へ踏み出した時、聞こえた会話に思わず足を止めてしまったのだ。
「ぐすっ…うぅ……」
「マシュー、泣かないで…マシューが頑張ってるの、俺が一番よく知ってるから。自信持って？」
「ん……ヒョン…っ、ぐすっ」
泣きじゃくるマシューを、優しく抱き締めながら頭を撫でているハンビンの姿がそこにはあった。そして、ゆっくりと顔を上げたマシューの涙を優しく拭うかのように、そっと目元に口づけを落とす。
あぁ、なんて美しいのだろうか。
まるで映画のワンシーンのような光景だった。
完成された美の前では何もかもが無力になる。そんなことは分かっていたはずなのに、目の前に広がる残酷な現実を受け入れられずにいた。
どうして？なんで？いつから？頭の中で何度も同じ言葉を繰り返す。
俺は逃げるようにしてその場を去った。これ以上見ていたら、頭がおかしくなりそうだった。
しかし、どんなに逃げても逃れられない事実というものはあるもので。次の日もそのまた次の日も、俺の目には2人が仲睦まじく寄り添っている姿が映っていた。何も知らないメンバーからしたら、いつも通りの光景に見えるかもしれない。でも、2人の関係性を知った今、彼らを見ると明らかに違うのだ。
お互いの距離感、視線の動き、手つき、仕草、表情、話し方。そういった些細な部分が、彼らは友人ではなく、恋人なのだと告げていた。
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作者名：ann | 作成日時：2023年5月31日 22時
