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待ち伏せ_fkr ページ6

生き物はそれぞれ形は違えど、追い込まれた時の抵抗手段を何かしら持ち合わせている。威嚇だとか、逃走を謀るだとか、はたまた攻撃を仕掛けるだとか。


でも、君はそのどれにも当て嵌まらなかった。
その大きな瞳いっぱいに溜まった涙は零れ落ちそうで、濡れてより黒さを主張する睫毛が艶やかだった。初めて泣いた顔を見た時、不謹慎にも綺麗だと思った。慰めの言葉をかけたのを覚えているが、多分心はその姿に見惚れていて記憶が曖昧だった。ただ、どうしてもこの泣き顔をずっと見ていたいと思ってしまった事だけは覚えている。



______________




「暑いね、アイスでも買いに行く?」


意気消沈して丸まった後ろ姿に、なんとも白々しい提案をする。フォローする立ち回りには自信がある筈なのに、彼女の事になるとどうもその能力は役に立たない。それでも意図を察した彼女はこくりと頷いてその頬を拭った。



冷房の温度に慣れきった体を、強烈な熱気が襲う。日射しの眩しさに思わず目を細める。
蝉が地面に落ちても尚大きな羽音を立てて無様に藻搔いているのを、然程珍しい光景でも無いのに何故か目が離せなかった。


「ねぇ、何見てるの。きもいから早く行こ」
「そう?俺は意外と好きだけど」
「え、虫好きなの?」
「うーん、嫌い。でも落ちて成す術無くて、それでも尚求婚しか出来ずに藻搔いてるの、面白いじゃん」
「え、何それ無理…」


思ったままを口にすれば、ドン引きという顔を大袈裟にして歩みを早める。待ってよ、と少し早歩きすればほんの数歩で追い付いてしまう。


「Aはさ、防衛本能って知ってる?」
「唐突だね、また難しい話か」
「いや嫌がんないでよ。単純な話でさ、危険が迫った時本能的に動物が取る行動の事なんだけど」
「へえ、例えば?」
「体を大きく見せるだとか、吠えるとかさ」


つまり?と、俺の言いたい事を探る様な視線。そういう所は聡いなぁと苦笑する。

.→←赤ちゃんはそんな顔しません



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(プロフ) - ゆゆさん» わ〜っ!お褒めの言葉ありがとうございます…嬉しいです; ; 頑張ります…!! (2020年8月7日 17時) (レス) id: 73563a7266 (このIDを非表示/違反報告)
ゆゆ(プロフ) - うわぁあ…まだ2つ目のお話までしか読んでませんが、すごい私の好みに刺さります笑笑応援しているので頑張ってください!!! (2020年8月7日 7時) (レス) id: 91c48177af (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2020年8月6日 5時

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