僕の願いは誰にも言わない

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〇nasu side〇

「で？どないするん？｣

珍しくイキったヨコの足元に正座してるたつ。


「丸ちゃんと…結婚したい…いや、します。

結婚させてください｣

床にごちん、とデコぶつける音がして

「私も、同じ気持ちです。お願いします｣

並んで正座した丸子もおんなじようにデコぶつけた。

「生活は？ふたりで…やっていけんのか？
たつ、就職して独り暮らし始めたばっかやのに｣


丸子とたつが姉弟としてやなく、男と女として生きていきたい、とアタシらに頭下げてから１年。
就職を期にたつは家を出た。


「おとんやひなちゃんには迷惑かけへん｣


「料理教室のアシスタントなんて、まだまだ食っていかれへんやろ。
そんなんで親子３人… ３人か…｣


そこまで言うてヨコはぼろぼろ涙こぼした。



「…きみくん、泣かんで！ごめん、、なさい｣


「丸ちゃんが悪いんちゃう！俺がっ…｣


あーあ。たつも丸子も。
ホンマ、泣き虫ばっかやのぉ。



「もぅ、オトンも素直やないなぁ。
ほれ、丸ちゃんも床に座ったまんまやと冷えてまうやろ｣


ヨコにティッシュ渡して、丸子をソファーに座らせたしょーたが


「なぁ、たつ。ホンマに幸せにできんのか？｣


ヨコの代わりにたつにメンチ切った。


「する。俺も幸せになる｣


睨み合う兄弟。
久しぶりに見たわ。最近ケンカせんようになったもんな。


「はは。睨むなし。なら、ええわ｣


グリグリってたつの頭撫でて、今度はしょーたが鼻啜った。



こうなった時のアタシとヨコとしょーたの結論はとっくに出とる。

法律的には問題はないのも調べてある。


「ほな、たつは戻ってきてふたりしてしばらくこの家におり。
必死こいて働いてある程度貯金してから独立すればええ｣

「…でも｣


「アンタらだけのためやない。
うちの…可愛い孫のためや。アホ｣


そう。丸子のお腹ん中には赤ちゃんがおるんやて。
体調崩してた丸子が病院行って確認してきた。
ギリギリ、エコーでわかったくらいのちっちゃなちっちゃな命。


「せやで。大事にせな…。大事に、大事に…｣


泣きすぎて目ぇ腫れてきたヨコの顔。
これはこれで愛しぃてたまらんのやけど。


「ってことで、また賑やかになるなぁ。
俺も今度彼女連れてこよー。胎教にまさみのピアノ聞かせたんねん｣


…今、サラッと爆弾落ちたな。


まぁ、ええ。
それは今度たぁっぷり時間かけて話聞こ。


みんな笑っておれればええわ。

形は変わっても、うちらはずっと


家族、やからな。

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