【ハイキュー】可愛くなれたら＊及川徹 (ページ2)

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学級委員の最初の仕事はクラスの名簿作りだった。
こんな事くらい先生がやればいいのに、という本音は口から出ることはない。
ふたりでやる仕事でもないので先生に言って私がやることにした。
同じ学級委員でも及川くんとは話していない。
放課後の誰もいない教室でクラス一人一人の名前を書いていく。
窓の外に目を向けると部活をしている人や友達と楽しそうに帰っている人、そんな人たちを見ていると自分だけが別世界にいるような気がしてくる。
カタン、と教室の扉の方からから音がして、音のした方へ目を向けると及川くんがいた。
「あれ〜？Aさん何してるの？」
話しながら及川くんはこちらへ向かって歩いてくる。
ジャージなのを見るとこれから部活なのだろうか。
「あ、クラスの名簿作り…」
「え？それって委員の仕事？」
名簿を見ながら及川くんは前の席に座った。
「俺知らなかったんだけど！」
「及川くんにも伝えてって言われたんだけどふたりでやる事でもないから…」
及川くんはじっと私を見つめる。
なんだかいたたまれなくなって目線を逸らした。
「Aさんて俺の事嫌い？」
「へ？」
突然の質問に変な声で返事してしまった。
「…嫌いなの？」
上目遣いで聞いてくるなんて反則じゃないか。
「き、嫌いじゃ、ないよ」
「…ほんと？」
私は首を縦にブンブンと振った。
「そっかぁ！今日は部活があってダメだけど、委員の仕事があったら絶対、絶対俺にも言ってね！」
「う、うん」
「じゃあ俺部活行ってくんね！いつもお疲れ様〜！」
上着を肩にかけて鼻歌を歌いながら及川くんは教室を出ていった。
こんなに会話することは入学式以来でまだ胸がドキドキしている。
メガネがない方が、という言葉を思い出す。
何度かメガネを外そうとしたけれどあの言葉に思い上がっていると思われるのも恥ずかしくて結局外せなかった。
「…あ、名簿」
早く終わらせないと、と思いシャーペンを握り次の人の名前を見てまた手が止まる。
及川徹。
名前を見ているだけなのに好きという気持ちが込み上げてくる。
私はゆっくり丁寧に、及川くんの名前を書いた。
「…好きだなんて、絶対に言えないな」
可愛くなれたらちゃんと恋できたのだろうか、好きだなんて言えただろうか。
こんな地味な陰キャを好いてくれる人なんて居ないんだろうな。
窓に反射している自分を見て大きなため息をついた。