【遊戯王VRAINS】レディ・ピーチメルバの独白【短編集】

ブルエンがネナベ垢と付き合っている ページ8

※ゆり



｢お疲れ。ブルーエンジェル｣

ニッコリと笑う彼にブルーエンジェルは頬を染めた。先程までスピード決闘をしていた彼女を労い、隣で彼女を褒める彼メルバは、ブルーエンジェルの恋人である。ネット恋愛、という最近流行りの恋。彼女も、それに魅入られた一人だった。

｢ありがとう、メルバくん｣

｢相変わらず、ブルーエンジェルはすごいね。俺も君の様に素敵な決闘者を目指して頑張らなきゃ｣

そんなことない、そう思った彼女がそれを口に出すことはしなかった。彼の決闘こそ自分の憧れだった。対戦相手の決闘者に敬意を払い、互いの健闘を称え合う。自身のカードを愛し、信じる決闘をするメルバ。ブルーエンジェルはニッコリと笑って彼を見つめる。

｢私は貴方の決闘が好きだから。誰かを目指すんじゃなく、メルバくんのデュエルが見たいわ｣

｢ブルーエンジェル……｣

ありがとう、と微笑む彼の姿はやっぱり素敵でブルーエンジェルは彼に飛び付いた。抱きとめたメルバの腕が彼女の頭を撫で、額に優しくキスを落とす。ブルーエンジェルの兄、財前晃がふたりを引き離すSOL緊急連絡用のモニターを使ってくるまで、ふたりはいちゃいちゃとくっついたままだった。

ブルーエンジェルとメルバはその後、お互いログアウトし、現実世界へと引き戻される。




ソファーの上。目を開けたそこは見慣れた空間で、Aは立ち上がって大きく背伸びをした。

｢…はぁ、今日もブルーエンジェル可愛かったっっ！！｣

両手で顔を覆い大声を上げ、じたばたと体を動かす。メルバと呼ばれる男性アバターを駆使する現実世界の中身はAという女性だった。彼女は隣の部屋の兄弟からうるさい！と怒号が飛んでくるまで、その場で軽いステップで足踏みをしていた。

Aが男性アバターを使う理由は、ネットアイドルであるブルーエンジェルに惚れたから。だけど、現実のメルバは女。必死にアピールして成功したこの恋は、身バレすると即破綻する。せめて本当に男なら、オフ会から現実世界での彼女と、恋愛に発展できたのかもしれない。辛い現実を思い出し、Aはよろよろとベッドに飛び込んだ。

｢リアルはつらい……｣

そのことを友人である葵に相談するべく彼女は端末機器を手に取る。


Aは知らない。

ブルーエンジェルの正体も、既に彼女に身バレしていることも。

そして、財前葵がAとの恋を『ネット恋愛』で終わらせるつもりは毛頭ないことも。

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