草薙さんと喫煙室の女性 ページ3
※名前変換なし
あ、火がない。
草薙がコートのポケットに手を入れ、がさごそと手を動かす。口にくわえたままの烟草から、望んだ味がせず、彼は小さく舌打ちをした。
近くのモール、喫煙室の中。愛用しているキッチンカーを駐車場に置き、店用の食材の買い出しへと来た草薙はその前に喫煙所へと立ち寄った。
相棒である高校生の遊作の前で一服するのは憚られ、最近では禁煙していた煙草が無性に吸いたくなった矢先。久々すぎてライターを忘れてしまった。草薙が仕方なく、頭を乱暴に掻き口からそれを離す。
今日は諦めるか。そう思い、手元にあるそれをコートに突っ込もうと手を動かす。しかし、その前に隣にいた若い女性が彼に声をかけた。
「火、いります?」
「あ、いいんですか?…貰っても」
「あはは、おにーさん面白いですね。ダメだったら言いませんよ」
どうぞ、と笑いながらライターを草薙に手渡す女性。彼はお礼を言いながら受け取ると、彼女もどういたしましてと、吸っていたタバコを蒸した。
ぱっとみ、自分より若そうな女性。それなりに高い身長はヒールのせいか。元々高いのか。綺麗な髪が揺れ、じっと見つめていると彼女は煙草をスタンドに押し付け火を消した。
「見すぎですよ、照れます」
「あぁ…悪いな。つい…」
「ふふ、おにーさんほんと面白い」
彼女がくるりと黒の膝丈まであるオーバーコートを翻し、喫煙室のドアへと手をかける。草薙はそれに急いで彼女に声をかけた。
「待ってくれ、ライターを…」
「んー、大したものじゃないしあげます」
ドアを開け、女性が出ていった喫煙室。草薙は一人、手の中に視線を移した。大したものじゃないと彼女は言っていたが、そこにはサロメのライター。値段は安くても、数千円はするだろうそれに草薙は紫煙の息を吐いた。
目を惹く素敵な人だった。
この狭い街で次会えた時、これを渡せるといい。あと名前も聞かせてもらおう。草薙は今度こそライターを自分のコートに仕舞い、火を消した。
その願いは彼が思うより幾分も早く叶う。
数日後、遊作と同じ制服を着た少女が遊作と一緒に自分の店を訪れる。そこで再開する彼女に、彼は驚きを隠せず声を上げるまで後少し。
賽は投げられた。
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しゅりんぷ(プロフ) - 凌さん» リクエストありがとうございます。了解しました。小説が出来次第上げさせていただきます。 (2021年10月5日 2時) (レス) id: fea4bb2672 (このIDを非表示/違反報告)
凌 - play maker側の女主人公がリボルバーに奪取され愛されるお話をお願いします。 (2020年10月9日 10時) (レス) id: 0f75895f1e (このIDを非表示/違反報告)
しゅりんぷ(プロフ) - ねこみこさん» リクエストありがとうございます。ハノイの女子隊員リア凸了解しました。出来次第随時更新させていただきます。これからもどうぞこの小説をよろしくおねがいします。 (2018年10月13日 18時) (レス) id: 9546177262 (このIDを非表示/違反報告)
しゅりんぷ(プロフ) - 加藤琉那さん» リクエストありがとうございます。了解しました。小説が出来次第上げさせていただきます。 (2018年10月13日 18時) (レス) id: 9546177262 (このIDを非表示/違反報告)
ねこみこ(プロフ) - リクエストさせていただきます。遊作とハノイの女子隊員のリア凸で (2018年7月22日 13時) (レス) id: 185c2ad794 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:しゅりんぷ | 作成日時:2017年10月6日 22時