【遊戯王VRAINS】レディ・ピーチメルバの独白【短編集】

空アル番外 所有物 後編 ページ14

｢生徒会長の、そのピアス…って｣

驚いた様子の彼女が一瞬だけ動きを止めると、あぁ、と驚いたと同時に先ほどと同じ笑顔を見せる。不意に動いた指が自身の髪を滑らせ耳にかけると、前に見たものと同じ、そこにはパロットグリーンの耳飾りが鎮座していた。仕草一つ一つが色目かしい、髪を耳にかける仕草さえも胸を高鳴らせ、黙りこくった私に生徒会長が声をかける。

｢人に知られてるとは思わなかった、この事は私と貴方だけの内緒にしてくれないかしら｣

微笑み、座っていた場所から退いた生徒会長が私の前へと歩み寄る。こんなに近い距離で憧れの人に手を握られ、見つめられる事を皆も一度体験してみるといい。比喩じゃなく石のように固まってしまうから、私のように。声を出そうにも、緊張で喉が震えるだけの私は、とにかくその場で首をぶんぶんと振り頷いた。それに、生徒会長は口元に手を当てて笑い、ありがとうと一言。

｢そっ、そレっテ！｣

固まったままの思考と体をなんとか動かし、喉から言葉を出すと、見事に裏返る。恥ずかしさで死にたい！と思うのは一瞬のこと。そんな私にも笑わず、ゆっくりでいいよと優しくフォローしてくれた彼女は、生徒会長なだけあって、こういう所が好かれる一面なのだろうと私は冴えない頭なりに思ったのを覚えている。きっと、私なら笑って茶化してた。

｢そ、のピアス綺麗ですネ…っ！｣

｢ふふ、ありがとう｣

ゆらりと揺れる瞳で笑う彼女に、バクバクと心臓が脈を打つ。光の反射でキラリと光るピアスに手を当てる生徒会長がゆっくりと声を紡いだ。

｢これはね、私の大事な人がくれたものなの｣

｢そ、そうなんですかっ！｣

｢えぇ、とっても…大事な人｣

生徒会長の、大事な人。失礼にも程があるけど、私達生徒は生徒会長が人といるところを見たことがない。そんな彼女の大事な人。気になるのと同時に、不思議な感覚へと陥る。彼女はひとりで生きるからこそ美しい、その言葉がガラリと崩れた瞬間だった。

｢＿＿＿＿＿＿＿。｣

｢え？｣

｢ふふ、何でもない。もう日も暮れる、そろそろ帰りましょう｣

生徒会長は私の目の前からくるりと背中を向けて、先程座っていた場所へと荷物を取りに行く。何でもない、彼女はそう言ったけど、私には最後の言葉は聞こえていたのだ。私のえ？という言葉は、聞き返したわけではなかった。





.





｢私が彼の所有物って、証｣


そう言っていとおしそうに笑った彼女の笑みを私はきっと一生、忘れない。

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