元同級生のヨハンと再開 ページ12
夢だった自分の店を開いて、もう一年経つ。そこそこお客さんもいて、その中に『常連さん』も出来た。Aは焼きあげたオレンジピール入りのフィナンシェを袋へと詰めて、店頭に並べる。昼時をすぎ、夕方に差し掛かるこの時間。客のいない店内で、入店を知らせるベルが鳴った。Aはドアの方へと足を向ける。いらっしゃいませ、その言葉は言い切る前に落ちた。
｢お、久しぶりだな｣
｢ヨ、ハン…なんで……｣
｢万丈目から店開いたって聞いて。おめでとう｣
ヨハンが、持っていた花束を目の前のAに突きつける。開店祝いには遅すぎるオレンジ色の花束を受け取り、彼女はただ呆然と突っ立つ事しか出来なかった。
｢……今更じゃない｣
ポツリと呟いた言葉。それは開店祝いの花束に向けてではなく。彼が会いに来るのが、の方が正しい。
十年前、学生時代付き合っていた元カレであるヨハン。彼女のデュエルアカデミア卒業日、わざわざ母国から祝いと同時に、別れにも似た言葉を告げた彼が自分に会いに来ている。彼女は詰まりそうになる喉を震わせた。
｢あの時の約束はまだ有効か？｣
俯いて、地面のタイルを見つめるA。Aも生憎今は独り身。色んな人と付き合ったりしたが、結局ヨハンを忘れることは出来なかった。あの時の約束、その言葉に体が反応する。
｢……何のことかしら｣
｢もし俺がプロの世界大会で優勝したら、お前は迎えにいくって話。十年もかかったけど…｣
あの時よりも、落ち着いた雰囲気の彼。Aがゆっくりと顔を上げた先、まゆを下げて微笑む彼にあの時の青年だったヨハンの面影はない。大人になったね、なんて十年も経てば当然で。
｢十年も前の話よ？ヨハン、私に気を使ってるなら大丈夫だから…好きな人がいるなら…｣
｢いない。どんなに経ってもAを忘れられなかった｣
｢……｣
｢ずっと、約束のために今日を待ってたんだぜ｣
瞳が潤んで視界が霞む。こいつは本当に馬鹿だ。一度手放すようなことをした癖に。Aは落ちていく涙に、呆れた声で返事をする。その答えとともに体に回された腕が震えていて、Aは泣きながら笑った。
｢…待ってたよ、馬鹿ヨハン｣
オレンジピール入りのフィナンシェが並ぶ横、『号外！プロ決闘者のヨハン・アンデルセンがプロデュエル大会世界制覇！』と書かれた新聞が音を立てて捲れた。
sub title：【オレンジピール・リザーブ】
空アル番外 所有物 前編→←空アルif 夢主が草薙の彼女だったら
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しゅりんぷ(プロフ) - 凌さん» リクエストありがとうございます。了解しました。小説が出来次第上げさせていただきます。 (2021年10月5日 2時) (
レス) id: fea4bb2672 (このIDを非表示/違反報告)
凌 - play maker側の女主人公がリボルバーに奪取され愛されるお話をお願いします。 (2020年10月9日 10時) (レス) id: 0f75895f1e (このIDを非表示/違反報告)
しゅりんぷ(プロフ) - ねこみこさん» リクエストありがとうございます。ハノイの女子隊員リア凸了解しました。出来次第随時更新させていただきます。これからもどうぞこの小説をよろしくおねがいします。 (2018年10月13日 18時) (レス) id: 9546177262 (このIDを非表示/違反報告)
しゅりんぷ(プロフ) - 加藤琉那さん» リクエストありがとうございます。了解しました。小説が出来次第上げさせていただきます。 (2018年10月13日 18時) (レス) id: 9546177262 (このIDを非表示/違反報告)
ねこみこ(プロフ) - リクエストさせていただきます。遊作とハノイの女子隊員のリア凸で (2018年7月22日 13時) (レス) id: 185c2ad794 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：しゅりんぷ | 作成日時：2017年10月6日 22時
