風磨先輩、結婚しましょう

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バイト帰りに、あいつと話した土曜日。


あれからもう一週間経ったが、Aは1度も俺の前に姿を現さなかった。


毎日一緒に食べてた食堂にも、松島だけが来るようになった。


なんで来ないのかを聞いても“仲良い友達出来たんだって”の一点張り。



…そんなAに、俺は少々腹を立てていた。


先週までは口を開けば“結婚しましょう”だとか“好きです”だとか言っていたのに、それがまるで嘘のように今は俺の前に姿すら見せない。




俺あの日の前後になんかしたっけ、なんて思い返しても全然記憶になくて、理由が分からないでいた。



…随分Aのことを気にしてるって？


そりゃ、俺だって、あれだけ好意を向けられて、嫌な気持ちはしないですよ。


まんまとあいつの作戦にハマったようで悔しいけど。



正直、Aのことをどう思っているかと聞かれたら、“好き”と答えるだろう。


風邪ん時看病してくれたのだってまぁ、嬉しかったし、デートだって松島に聞きまくってあいつが行きたがってるらしい水族館を選んだ、相当惚れ込んでんな、なんて自分で恥ずかしくなるけど。


ストーカーじみてようとあいつなりの愛情表現だし、まぁ惚れた方が負けっつーか。



でも、俗に言う“両思い”である俺らは、付き合っているわけじゃない。


あいつは一度も俺に“付き合ってくれ”とは言わなかった。



そう、何があっても、“結婚しましょう”なのだ。

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