流 ページ49
平日の昼間、救急車と警察に連絡が入る
「息子が部屋で首をつっている」
涙声で焦った様に通報してきた男女それぞれは必死で状況を説明して到着した救急隊員の死亡確認の言葉にショックで倒れてしまった
警察が息子であるAの部屋に入り捜査をすると隅に結構な厚さの本が何冊も積み重なっているのを見付ける
それは全て日記帳でAが生まれた日から女性の字で書かれた日記とひらがで書かれた子供の日記
そして段々と綺麗になって行く文字を見て「手がかりがあるかも」と一から読まれることになったAの人生の日記
ここからはずっと日記を辿るのみ
最初の母親の日記は出産を終えた日から毎日書かれていて「とても幸せ」「これからが楽しみ」と言った明るい内容がずっと綴られていた
数年も毎日に欠かさず書かれた日記は途中から平仮名の子供の字が毎日綴られる様になった
日記の持ち主が母親から息子のAに受け継がれ「新しい事を見付けた」「今日は何もなかった」と大分雑だが愛虚のある内容に
家族の事や兄と遊んだ事、嬉しかったこと等が毎日綴られている
日記は年月を重ねるごとに文章がしっかりしてきて文字も丁寧になり漢字も使われる様に
内容もその日の内容だけではなく将来の事や自分の意見の様なモノも増えていき成長を感じる
日記の内容は明るい物や報告的な内容が多かったが一定期から自分と兄を比べた内容が目立ち始めた
同じ日に生まれて同じ環境で育ったのに兄の方が何事にも秀でていると綴られ続ける日記は段々と「苦しい」「何で」というマイナスな言葉が増えていく
時折、滲んだ文字も見受けられる中「刀也が消えた」の一文が綴られた日がありその日以降はまだ明るい内容が増える
辛すぎて兄の存在を消してしまった弟だったが暫くして兄の存在を再度認識し暗い内容へ
その的は日記の内容が持ち直すことは無くてひたすらに重苦しい内容が続く
「キツイ」「刀也が羨ましい」劣等感を感じ取れる内容を読み進めていくと徐々にそんな感情を抱く自分への嫌気が募る文が増えていき
首を吊る数か月前辺りから
「刀也は自分を大切にしてくれているのに、その思いに答えられない自分がいやだ」
という自己嫌悪の方向に変わっていき、最終日に近付くにつれて「死にたい」になり始める
そして日記の最後のページに家族への感謝と謝罪
兄に対する自分の醜い感情が募って苦しいので終わりにすると書かれ終わっていた
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作者名：黒梟 | 作成日時：2023年1月8日 23時
