Sparkler.8。 ページ8
「私は、別に、なんとも、思ってませんよ。」
じっと見つめてくる鏡花ちゃんに驚愕を見せる中島さん。
でも、きっと、この次に言う言葉は探偵社全体を震わせるだろう。
最初は言おうか悩んだ。
だが、きっと、ここでなら、ここでしか言えないことなのだ。
何故、私が今回"歓喜"や"尊敬"、そして"憧れ"なんかを抱いているかが一瞬でわかるような、かつ疑わずにはいられない事実。
「自分も、あんな風に慣れたらなって。あんな風に
「なっ。」
何か言いたげな中島さんを制止し、私に近寄る鏡花ちゃんの目は、どこか光がなく、私は見たことがないが暗殺者を連想させた。
「私の、夢だからです。」
大体何故、自分が養子だったのかも想像がつく。
自分には、本来ならありえない、情報を抱えているから。
「Aは、イノウリョクシャ？」
「嗚呼、イノウリョク、そんな名前なんですか。」
昔、誰かが言った気がする。
お金のない画家は油絵を書くのに新しいカンバスを買う金すらなかった。
だから、自分が描いた絵の上を白く塗りたくり、その上にまた、絵を描く。
それを繰り返すのだと。
実際、私は美術部だが、部費削減のため、同じようなことをした。
だから、ペインティングナイフなんかで削ると下の絵が出てくる場合がある。
そう、だから、油絵の中には今、描かれている作品が出来の悪いものだとしても、その下にお宝が眠っている時があるのだと。
＿＿＿太宰A。
＿＿＿異能力『花火』。
「出来の悪い私の底には実は、喉から手が出るほど貴重な記憶が眠ってるなんて、誰も信じませんよね。」
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作者名：津田万水。 | 作者ホームページ：@lotus_1022
作成日時：2017年8月28日 7時
