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Sparkler.18 ページ18

夜。

日も沈み、月が頭上には浮かんでいる。

川には美しい月が映されていた。

「今日は、連れていこうとしないんだ。」

[紅子の特別な日だからね。]

[偶には、お祝いしなくちゃね。]

そう言ってさっと消えていく死者たち。

そんな中、ただ一人の男の死者のみが立ち尽くしていた。

「織田、作之助。」

[嗚呼。卒業おめでとう、紅子。]

「有難う。そう言えば、貴方の言った通りになりましたね。」

[嗚呼。あいつは俺の、友達だからな。]

珍しく笑う死者を見た私は少し驚いたが、彼は特別な死者なのだろう。

何だか気分がよかったので微笑み返しておいた。

「今日は身を投げるのにいい日ですね。」

[そうなのか?]

「冗談ですよ。そこは止めてください。」

きょとんとした彼を見る限り、相当な天然なのだろう。

少しばかり雑談をしていると、さっと彼が消えかけた。

[紅子、卒業おめでとう。ほら、仲間だ。]

ふと振り返るとそこには太宰治がいた。

「おめでとう、紅子。」

「有難う、太宰治。」

「いやー、思い出すねぇ。」

そう言うと太宰治は川の水にそっと触れた。

あの日を思い出す。

あの日、全てが変わった日。

今日みたいな月夜の日。

「まさかここでとんだ落とし物を拾って家族にするとは思いもしなかったよ。しかも自分と同じ嗜癖を持った女子中学生と来た。」

「それは悪かったですね。」

「でも、今は大切な家族だよ。」

川に映されていた彼の顔をのぞき込む。

何とも嬉しそうな表情を浮かべていた。

「有難う、治。」

「え?も、もう一回言ってくれないかい!?」

「ヤダ。」

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作者名:津田万水。 | 作者ホームページ:@lotus_1022  
作成日時:2017年8月28日 7時

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