第36夜 ページ36
「雨月さん……お、れ……まだ……。」
月にはかすみがかかるものの、その美しさは減ることは無い。
「本当に哀れな奴だ。」
無限城では、朝霧は下弦の肆により、壁に拘束されていた。
壁に下半身と腕を埋め込まれた朝霧は、壁同様に身体が鳴女に接続されており、戦意は完全に喪失されていた。
その目はどこか虚ろで涙を流しており、幻を見ているであろう朝霧を鬼舞辻は憐れみ、嘲笑った。
「……ようやくだ。ようやく。」
鬼舞辻は20年前と変わらぬその姿に、その永遠を目の前に、恍惚とした笑みを浮かべる。
20年前に、元光柱・高御堂雨月を殺したかいがあったと。
それが今になって生きてくるとは思わなかったと言う。
奇跡だった。
「私が手を下して二度も現れた奴は朝霧涼雅、お前ただ独りだよ。」
鬼舞辻が朝霧に声をかけても、肌に触れても、朝霧が反応を見せることはない。
鳴女はその様子にたいそう驚いた。
鬼舞辻であればすぐに殺してしまうのでは、取り込んでしまうのではないかと思っていたからだ。
「鳴女。此奴は、利用価値がある。」
「……承知しました。」
心を覗かれてもなお、己も殺されない。
鬼舞辻にとっての朝霧涼雅というおとこがなんなのか。
鳴女はますます疑問に思ったが、それ以上は考えなかった。
417人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
天麩羅 - わわわ更新されてるぅぅううう!! (2020年3月15日 22時) (レス) id: eb9a0c61ed (このIDを非表示/違反報告)
天麩羅 - わぁーーーぁああああ!面白いぃぃぃぃいいいい!更新頑張って下さいぃいい!! (2020年3月14日 22時) (レス) id: eb9a0c61ed (このIDを非表示/違反報告)
小坂谷 真夜(プロフ) - いおりさん» ありがとうございます。そのようなお言葉本当に嬉しい限りです。 (2020年2月1日 22時) (レス) id: 79a8fd2e1c (このIDを非表示/違反報告)
いおり - めっちゃどタイプの小説きたーーーっ、これからも期待して待ってます。更新頑張ってください (2020年1月12日 14時) (レス) id: bce55b4438 (このIDを非表示/違反報告)
小坂谷 真夜(プロフ) - mo4さん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです。 (2020年1月12日 13時) (レス) id: 79a8fd2e1c (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:小坂谷 真夜 | 作者ホームページ:@lotus_1022
作成日時:2019年9月9日 22時