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第4夜 ページ4

「胡蝶殿に用事があって参った。」
「……。」

朝霧は目の前の少女に困惑していた。
冒頭の台詞を何度も繰り返し言うが、彼女はにこにこと笑みを浮かべるばかりで一言も発してはくれない。

「何をなさっているのですか!!」

救いなのか、なんなのか。
洗濯物を大量に抱えた二つ結びの少女が朝霧に怒鳴りつけた。

「胡蝶殿に用事があって参った。」
「名を名乗ってください!!出なければお通しできません!!」

そうか、名乗り忘れていた、と朝霧は内心後悔した。
それは目の前の少女も通してはくれない筈だと納得してしまう。

「すまない。胡蝶殿に朝霧涼雅が来たとお伝えしてはくれないだろうか。」


二つ結びの少女は目を見開くと、隣の少女に通すよう指示を出した。


「朝霧様でしたか。気づかずに無礼を。すみません。」
「いや、いい。こちらこそ名乗りもせずにすまない。」

「カナヲ、案内してあげて。」
「わかった。」

無言の少女がカナヲ、二つ結びの少女がアオイ、と記憶に刻むと、朝霧はカナヲの後を大人しくついていく。
勿論、目的の人物__胡蝶しのぶ__の元に辿り着くまで、会話などない。

「師範、朝霧様がおいでです。」

襖を開け、朝霧が入ったのを確認すると襖を閉め、静かに下がるカナヲの動きに無駄はなかった。
継子には誰でもなれるわけではない。
それなりの力量を彼女は持ち合わせていると、内心感心しているとしのぶの方から朝霧に声がかかった。

「会議ぶりですね、朝霧さん。こんな昼間に堂々と来るのは初めてではないでしょうか?」
「やむを得ない。」

朝霧はしのぶの前で羽織を脱ぎ、腕を捲って見せた。
そこは厚かましく包帯が巻かれている。

それを見るとしのぶは顔を顰めた。

朝霧は蝶屋敷に定期的に訪れている。
とは言っても、夜中にこっそりと直接しのぶに会うことが多かった。
そうしなければならない理由があった。

「朝霧さん。命を測り間違えてはいけませんよ。いくら貴方が……、いえ、この話はよしましょうか。」


朝霧は事が終わるまで何も言葉を発さない。
これもいつもの事。

「忘れないでくださいね。貴方の命に、限りがある事を。」

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天麩羅 - わわわ更新されてるぅぅううう!! (2020年3月15日 22時) (レス) id: eb9a0c61ed (このIDを非表示/違反報告)
天麩羅 - わぁーーーぁああああ!面白いぃぃぃぃいいいい!更新頑張って下さいぃいい!! (2020年3月14日 22時) (レス) id: eb9a0c61ed (このIDを非表示/違反報告)
小坂谷 真夜(プロフ) - いおりさん» ありがとうございます。そのようなお言葉本当に嬉しい限りです。 (2020年2月1日 22時) (レス) id: 79a8fd2e1c (このIDを非表示/違反報告)
いおり - めっちゃどタイプの小説きたーーーっ、これからも期待して待ってます。更新頑張ってください (2020年1月12日 14時) (レス) id: bce55b4438 (このIDを非表示/違反報告)
小坂谷 真夜(プロフ) - mo4さん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです。 (2020年1月12日 13時) (レス) id: 79a8fd2e1c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:小坂谷 真夜 | 作者ホームページ:@lotus_1022  
作成日時:2019年9月9日 22時

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