第13夜。 ページ13
時透と朝霧は手を繋いだまま、帰路に着いた。
時透の左手には先程朝霧に買ってもらった金平糖の入った袋がぶら下がっており、右手は朝霧の左手をしっかりと握っていた。
「別に蝶屋敷まで送ってもらわなくても大丈夫だ。無一郎の屋敷は蝶屋敷からは少し遠い。」
「いいよ、別に。涼雅さんが途中で倒れないか不安だし。」
「そうか。ありがとう、無一郎。」
そう言って微笑む朝霧。
珍しく笑みを零す朝霧を見て、時透はどこか嬉しくなったのを感じた。
朝霧は世にいう色男であった。
背丈は高く、スラリとしているにも関わらず、一見分からないが、それなりの筋肉がついている身体。
美しい黒髪の隙間から覗く金色の双眼。
程よく紅く熟れた厚すぎず、薄すぎない唇。
着物で身を包み、外を歩けば注目の的である。
そんな朝霧を今、独り占めしていることに優越感を覚え、時透の胸が高まる。
"本当の兄であればいいのに。"
時透は心のどこかでそう思う。
心の中で、無意識に、心の拠り所を探しているのかもしれない。
「僕ね、もしかしたら、この記憶も無くなっちゃうかもしれないけど、ちゃんといつか、必ず思い出すからね。できれば、忘れたくないけれど。」
「はは、そうだな。もしも忘れたとしても、またこうやって外に出ればいいさ。」
・
「朝霧さん、お薬を……。」
「シー。」
「あらあら。」
夕方。
胡蝶が朝霧に割り当てられた部屋を訪ねると、時透と朝霧が縁側に夕日を眺めながら座っていた。
時透は朝霧に寄りかかる形でぐっすりと眠っている。
「また後で伺いますね。」
「助かる。」
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天麩羅 - わわわ更新されてるぅぅううう!! (2020年3月15日 22時) (レス) id: eb9a0c61ed (このIDを非表示/違反報告)
天麩羅 - わぁーーーぁああああ!面白いぃぃぃぃいいいい!更新頑張って下さいぃいい!! (2020年3月14日 22時) (レス) id: eb9a0c61ed (このIDを非表示/違反報告)
小坂谷 真夜(プロフ) - いおりさん» ありがとうございます。そのようなお言葉本当に嬉しい限りです。 (2020年2月1日 22時) (レス) id: 79a8fd2e1c (このIDを非表示/違反報告)
いおり - めっちゃどタイプの小説きたーーーっ、これからも期待して待ってます。更新頑張ってください (2020年1月12日 14時) (レス) id: bce55b4438 (このIDを非表示/違反報告)
小坂谷 真夜(プロフ) - mo4さん» コメントありがとうございます。そう言っていただけて嬉しいです。 (2020年1月12日 13時) (レス) id: 79a8fd2e1c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:小坂谷 真夜 | 作者ホームページ:@lotus_1022
作成日時:2019年9月9日 22時