不意打ちはやめてよ。【１×２main】[完] (ページ1)

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「じろ、そろそろか…？」

「うん、行こうかな。余裕持っておきたいし。」

ソファにかけていたジャケットに袖を通し、傍らの姿見に全身を映す。
黒のリクルートスーツ。
肩パッドがやや浮いているのを除けば、どこにでも売っている、ごく普通の代物だ。

着衣の乱れがないことを確認すると、鞄を片手に玄関へと続く廊下に出た。

今日は、ある会社の最終面接だった。
それ故、休日ならば昼過ぎまで部屋から出てこない四郎なども、
今日はこんな朝早くから起きてきたのである。

「じろちゃんじろちゃんっ、」

一旦鞄を置き、靴を履き終わったところだった。

ドタドタドタ…とさぶが派手に足音を鳴らしながら、廊下を一直線に駆け寄ってきた。
かと思うと、俺の前に着いた途端、何が入っているのか、
両手に抱えていた何やら重そうなリュックサックをひっくり返した。
バサーッと中身が騒音とともに盛大にぶちまけられ、床で雪崩を起こす。

「じろちゃんっ傘持った？のど飴持った？ムヒは？
救急セットは？マッチは？狼煙は？無線機はっ？」

辺りに散乱する物を一つひとつ掲げては、矢継ぎ早に持ったかと確認してくる。

「さぶは俺をどこに行かせる気だ…」

誰がどう見たって、途中から明らかに面接に持って行く物ではない。
どこでサバイバルをする気なのだろうか。

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